満開の桜が散り始め、春から初夏へ移ろう季節。 清荒神清澄寺の境内では4月5日に春のお茶会が開催され、多くの参詣者が野点を楽しみました。 鉄斎美術館本館「聖光殿」では5月24日まで鉄斎の人物画の展示(後期展)を観ることができます。草月流の華道家として、地元宝塚とのつながりを大切にしている多田玲秋さんと「鉄斎の人物画―画道のはじめは人物なり―」(前期展)を鑑賞、画家にはとどまらない鉄斎の幅広く深い知識に触れることができました。
鉄斎作品はどの画にも通底する哲学が。
草月流の関西本部がある京都に出向いた折、偶々、鉄斎の書と画を観る機会がありましたので、鉄斎美術館本館での展覧会を楽しみにしていました。
風格ある建物で、ワンフロアーの広い会場はとても見やすく、4つのテーマに分けられた展示をゆっくり鑑賞することができました。
「日本の先哲と風俗」は鉄斎が尊敬する人物の肖像画と祭などの風俗画。京の年中行事を描いた『名勝十二月図』や『大津絵図』に描かれている人物は粋で表情がそれぞれ違っていてユニークです。子どもの頃は大津絵とは知らず福禄寿の誇張された長い頭をずっと奇妙に思っていました。鉄斎は大津絵の目の表現に注目していた、と伺いました。
アイヌの風俗が描かれた『蝦夷人熊祭図』は、当時まだ異郷の地でもあった蝦夷地への関心の高さと探求心に驚かされます。
「中国故事と蘇東坡」で印象に残ったのは墨だけで描かれた、中国故事に題材を得た『虎渓三笑図』。墨の濃淡だけで描かれていますが、失笑する高僧と2人の人物の心の内までもが伝わってきます。華道でも究極の美は精神世界の表現です。目を引く鮮やかな花々ではなく、枝物や時には枯れた植物を使って表現しますが、鉄斎の画と同じように、生ける側の精神性が問われます。永遠の課題といえるでしょう。
また、中国の文人・蘇東坡を描いた作品も多く展示されていて、解説を読むと鉄斎が敬愛した東坡の高邁な精神を知ることができます。
「根っこは同じ」という鉄斎の宗教観を表す信仰をテーマとした「儒・仏・神・道教」。
そして「人物表現の境地」では晩年の奔放な力強い筆致の作品に出会えます。
鉄斎の理想の境地でもある『懐素書蕉図』。貧しさ故、紙を買う事ができなくとも、懐素は嬉しそうな顔で芭蕉の葉に書いているという意味合い、手に入れた懐素愛蔵の印が捺されているのも鉄斎らしい一面ではないでしょうか。鉄斎作品には現代人にこそ必要な哲学が秘められていると、改めて感じることができました。
後期も楽しみにしたいと思います。

多田玲秋
草月流いけばな講師。「宝塚いけばなサロン」を主宰。舞台装花、いけばな展示、コラム執筆などでも活躍。いけばな文化を世界へ発信するとともに、地域での活動にも力を入れる。
鉄斎の人物画
―画道のはじめは人物なり―
会 期:後期4月18日(土)~5月24日(日)
開館時間:10時~16時30分
会 場:鉄斎美術館本館
月曜休館
(但し4/27、5/4開館 5/7休館)
入場料:一般600円
高大生400円
小中生200円
(65歳以上、障害者手帳提示は半額)