美濃焼を代表する陶芸家・荒川豊藏の作品は第一回から第三十七回までの間に、度々展示されてきましたが、今展示は豊藏の作品の中でも秀逸とされる茶碗や花入れ、香合の他、書画も5幅並び豪華です。
豊藏は画家を目指していた時期もあり、生まれ故郷の岐阜県多治見市から上京しましたが、陶芸に転向し、京都の東山窯、鎌倉の星岡窯で作陶、昭和5年36歳の時に岐阜県大萱の古窯址で桃山時代の志野の陶片を発見します。美濃古窯の調査発掘を続け、志野や瀬戸黒が愛知県の瀬戸で焼かれていたという定説を覆しました。昭和8年(39歳)自らの窯を大萱に築き美濃焼の復興を目指して作陶生活に入ります。そして「志野」「瀬戸黒」二つの技法で昭和30年(61歳)国の重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されました。古陶の忠実な再現から自身の個性的な作調へ展開を遂げ、晩年は特に見事な作品を遺しています。桃山を超えた現代の創造的な芸術となりえた豊藏の「志野」「瀬戸黒」「黄瀬戸」。史料館ではそれら晩年の作品を中心に展示、中でも絶賛されている優しく美しい色調の「鼠志野梅絵茶碗」や「志野菊香合」を間近に観ることができます。
豊藏は清荒神清澄寺先代光聰和上とも親交が深く、当山の茶室「春光庵」の落成の折に贈られた85歳の3幅の書画「春光草自生 一行書」「寿 一字書」「老梅之図」も味わい深い作品です。