平成20年11月に開館した史料館の開館記念展を始め、これまで27回に及ぶ展示でも荒川豊藏の貴重な作品が展示されてきました。
豊藏は昭和8年、美濃焼の復興を目指し、大萱に築窯。そこで制作した「志野」「瀬戸黒」の人間国宝として広く知られていますが、昭和21年には、染付や色絵、粉引、鉄絵など多種多様な焼きものを作陶するため、多治見の虎渓山に水月窯を築きました。
陶芸の道に入る以前には画家を志して上京したこともあるほど、絵にも長け、常にスケッチ帳を携え、風景や花鳥の写生、古陶磁の模写や自作の茶碗など、身の回りのものは何でも描いたようです。そして、水月窯では絵に対する思いが溢れた作品が多く生み出されました。史料館の展示では北側に、墨の濃淡で描かれた90歳の作品「山の図」の掛軸と赤絵や染付など五つの茶碗が配され、楚々とした白梅や色鮮やかな橘、藍が美しい牛など一つひとつの画を楽しむことができます。南側には、志野の春を描いた陶板が掛けられ、染付の花入れや赤絵の鉢など形も美しい器、キャビネットには遊び心が垣間見られる「絵変わり火入れ八種」が並び、豊藏の自在で楽しく、のびやかな筆運びを観ることができます。