鉄斎は中国明末の文人・董其昌の言葉「万巻の書を読み、万里の路を行く」を生涯実践し、和漢の書物に学び、そこから多くの画題を得て多彩な画を描きました。よく知られているのは中国を題材にした山水画や仙境図ですが、日本国内を北は北海道から南は鹿児島まで、自らの足で隈なく旅し、各地の景や風俗も多く描いています。三重の二見浦夫婦岩に昇る初日の出を描いた「朝晴雪図」(前期)や京都の四季を写した茶筒「京八景図茶盒」(前期)などよく知られた風景のほか、珍しいアイヌの舞踊を描いた「蝦夷人鶴舞図」(前期)や鉄斎の心に残る「名所十二景図」(後期)が展示され興味がそそられます。
鉄斎の旅の目的は名所旧跡を巡る単なる物見遊山ではなく、地理の研究調査し、先哲の墓を弔い、忠臣孝子の跡を訪ねることでした。この展覧会では、鉄斎の画を鑑賞しながら鉄斎ならではの全国歴遊の旅が楽しめそうです。