鉄斎美術館にはよく訪れていて晩年の作品「朱梅図」や「富而不驕図」などに出会うのを楽しみにしています。
鉄斎の書画は豪胆で力強く、特に晩年、年齢と共にますますその感が深まります。器玩展は初めてでしたが、名工とのコラボレーションにも鉄斎の奔放さと勢いが遺憾なく発揮され見ごたえがありました。
名工の作品そのものと、そこに施された鉄斎の絵付け、この二つを同時に楽しめるのが今回の企画です。お互いに心が通じあった者同士でないと完成しない作品ばかりです。また、二人がどんな会話を交わしたのかも興味津々、鉄斎と同時代に生きた陶工、指物師など広い分野にわたる名工との会話が偲ばれます。
絵を描いている私にとって強く印象に残ったのは11枚重ねの「魁星図絵具皿」、12枚重ねの「魁星閣図絵具皿」と青磁の筆洗です。
これは鉄斎の晩年の友人である陶工、初代諏訪蘇山から贈られたものだそうで、鉄斎が愛用していたことが絵具皿に残る岩絵の具からもわかります。絵具皿に施されている魁星図は、中国では文運をつかさどる星とされ、鉄斎が好んだ画題とのこと。筆洗の豊満なつくりと落着いた色調の青磁にも惹き込まれました。
これら鉄斎愛用の品々からあの素晴らしい作品の数々が生まれたのだと想像するだけで楽しくなってきます。「弘法筆を択ばず」と嘯いてプラスティックの筆洗などを使っている私には鉄斎の画に対する凛とした姿が眩しく映ります。
あらゆる画法に精通し、独自の感性が並外れて豊かであった鉄斎を雲上に望みながら、私は私なりに美意識を磨き続けることに日々励み、自分らしさを表現できる確かな技量を確立していきたいとの思いを新にしました。
髙木綏子・1939年大阪府生れ。画歴30年。ヨーロッパの美しい風景や花をモチーフに優しい筆遣いとお洒落なタッチで表現する油彩、水彩を中心に池田市の画廊ぶらんしゅや川西市の画廊シャノワールなどで個展13回。89年ソロプチミスト川西創設メンバーで副会長、会長を歴任。川西市南花屋敷在住。