日本最後の文人画家といわれる京都出身の富岡鉄斎(1836~1924)の作品を収蔵する専門美術館として、昭和50年(1975)宝塚の名刹、清荒神清澄寺の境内に開館した鉄斎美術館が来年、35周年を迎えます。第37世坂本光浄和上が鉄斎の作品に流れるその精神性に心酔し、晩年の鉄斎と親交を深める中で蒐集されたコレクションを基に第38世光聰和上の志により鉄斎美術館がオープンし、年間4、5回、趣向を凝らした企画展が開催され(本誌1998年2月号より掲載)、第39世光謙和上に受け継がれています。
現在は20歳代から89歳で亡くなるまで好奇心旺盛に描き続けた鉄斎の作品のほか、多くの粉本や筆録など約1200点が蒐集され、鉄斎研究の拠点としても大きな期待が寄せられています。
来春開催される35周年記念展の前期「鉄斎の富士」は若い頃から晩年まで描き続け、鉄斎の好画題でもあった富士山を一堂に会する企画で、有名な全容と山頂を描いた六曲屏風一双「富士山図」(左上の写真)から九十落款のある木炭で描かれた富士までその魅力を余すところなく見せてくれることでしょう。
後期「鉄斎-豊潤の色彩-」では鮮やかで繊細な色彩感覚に焦点が当てられ、「群僊集会図」(右上の写真)など美しい色彩の収蔵作品のほか、重要文化財の「阿倍仲麻呂明州望月図・円通大師呉門隠栖図」(辰馬考古資料館)や加陽宮家に献上された「蓬莱僊境図・武陵桃源図」(京都国立博物館)など大作を間近に観ることができます。
鉄斎芸術に迫る35周年記念特別展。宝塚にとって貴重な展覧会と言えるでしょう。