今年の元旦はうっすらと雪化粧し、冬の風情を見せてくれた清荒神清澄寺。四季を通して自然の美しさを感じることができる境内は「雪月花」を愛でる日本人の心を表しているかのようです。寒さが和らぐ弥生は本堂横前の紅白梅が楚々と咲き、卯月には桜の下で野点が催され、皐月の頃は西の谷を風が渡り、炎暑の季節には不動明王が祀られている龍王滝に涼を求め多くの人が訪れます。霜月に入ると境内の見事な二本の大銀杏が色づき、全山の紅葉を楽しむことができます。また、清澄寺の雪景色も珍しく、その光景は写真パネルで展示されています。
館内では昭和に活躍した洋画家で温かな色遣いに特徴のある脇田和 筆の「花卓」と書家として「鉄斎の書」などの著書がある、野中吟雪 筆「雪月花」書、さらに一年十二カ月に因んだ永楽即全 造の「仁清写十二月茶碗」が展示されています。江戸前期に活躍した京焼の陶工、野々村仁清の作品を写した茶碗は一月の羽子板に始まり、梅、桃、桜、菖蒲、糸巻、菊、紅葉など金をあしらった鮮やかな絵付けが目を楽しませてくれます。中でも、十二月の雪松は地味な色遣いながら日本の美を感じさせる逸品です。
ほかには、すすきの蒔絵が施された三日月形の珍しい香合、菊の螺鈿が美しい大棗、そして、千家十職の袋師・土田友湖による袱紗「染雪月花」は古色の美しさを味わってほしい作品です。これらの四季に因んだ作品を鑑賞し、「雪月花」を愛でた日本人の悠久の心に触れてみませんか。