12月28日まで開かれている「秋の移ろい」展。
秋は三秋に分かれ、寒暑両方を知る唯一の季節であり、初秋には古来より稲穂の実りを助ける「稲妻」が秋の訪れを告げ、仲秋には鈴虫が鳴き、赤蜻蛉が飛びかう時期が過ぎれば「中秋の名月」を愛でるお月見。晩秋には稲をはじめ、桃、栗、柿などが一斉に実り、収穫の時期を迎えます。菊花が香り、紅葉狩りを楽しむのも秋ならではの風物詩です。
展覧会では三秋それぞれをテーマとした作品が展示され、日本の秋の移ろいをゆっくりと味わうことができます。
茶道具の中でも目を引くのは、永楽善五郎の「赤瓷金襴手菊茶碗」。赤い地に見事な金の大菊が内側にも大胆に描かれている逸品です。赤蜻蛉や紅葉、栗の図をあしらった茶碗、鈴虫や秋草の蒔絵棗のほか人間国宝・荒川豊藏の「鼠志野水指」は稲妻をイメージした貫入が美しい芸術的な作品です。現代日本画家・千住博が描いた印象的な黄金に輝く銀杏の画や独特の筆致が魅力の即中斎の書「清秋竹露深」、また、芭蕉の「枯枝に烏のとまりけり秋の暮」という句銘のある茶杓も見逃せません。
第13回関西文化の日にあたる11月15日、清荒神清澄寺の境内では、秋のお茶会が開催され、多くの人が参詣とともに紅葉の中で野点を楽しみ、史料館や鉄斎美術館を訪れました。開館7周年を迎えた史料館では「秋の移ろい」をテーマにした図柄の書画や茶道具等が紹介されています。