第30回を迎える史料館の初春のテーマは「神融 ―霊妙なるもの―」。
書家で、鉄斎研究家でもある野中吟雪筆の「神融」と「霊妙」の書が展示室壁面を飾り、神聖な雰囲気をかもし出しています。
古より中国では霊妙な想像上の動物が神の遣い「四(し)瑞(ずい)」として崇められており、応(おう)龍(りゅう)、鳳凰(ほうおう)、麒麟(きりん)、霊(れい)亀(き)と呼ばれ、瑞兆(ずいちょう)(よい兆し)として姿を現すとされています。中国の道教では霊亀が背負う神山である蓬莱山に不老不死の仙人が棲むと伝えられています。仙人は日本では七福神の一神、寿老人となり、信仰の対象として崇拝されてきました。仙人を描いた荒川豊藏の「染付仙人絵図鉢」や蓬莱を描いた永楽即全の「紅毛写蓬莱絵水指」に美しい仙境世界を観ることができます。鳳凰があしらわれた「鳳凰蒔絵溜中棗」は金閣寺の残木で造られたという棗で、金閣寺の屋根にも飾られている鳳凰が金蒔絵で施された貴重な作品。楽了入の味わい深い「安南写鳳凰ノ絵茶碗」や宮川香斎の金をあしらった華やかな「真葛桐鳳凰茶碗」も美しい作品です。また、龍は龍神とされ、中国では皇帝のシンボルですが、雷雲や嵐をよぶ存在として、日本の雷神や風神につながっているといわれており、「風神茶碗」と「雷神茶碗」が対で展示されています。
新年には吉兆を願うとともに、神仏との融合をテーマとする清荒神清澄寺ならではの神聖な作品をじっくり鑑賞してみてはいかがでしょう。