美濃焼を代表する陶芸家・荒川豊藏の作品は第一回展示から第三十七回までの間に、度々展示されてきましたが、今展示は豊藏の作品の中でも秀逸とされる茶碗や花入れ、香合の他、書画も5幅並び豪華です。
豊藏は明治27年に岐阜県多治見市に誕生、「志野」「瀬戸黒」の二つの技法で昭和30年に国の重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されました。昭和5年に岐阜県大萱の古窯址で桃山時代の志野の陶片を発掘。これは志野や瀬戸黒が愛知県瀬戸市で焼成されていたという従来の定説を覆す大発見でした。
そして、その地に窯を築き美濃古陶の再現に心血を注ぎますが、やがて彼は再現のみに飽き足らず、徐々に自身の個性的な作調を展開していきました。こうして桃山時代の古陶に深く根ざしながら、桃山を超えた現代の創造的な芸術となった豊藏の「志野」「瀬戸黒」「黄瀬戸」。中でも絶賛されている優しく美しい色調の「鼠志野梅絵茶碗」を間近に観ることができ、美濃焼の代表的な作品の数々が堪能できる格調高い展示になっています。
当山の茶室「春光庵」の落成に豊藏から贈られた3幅の書画「春光草自生 一行書」「寿 一字書」「老梅之図」も味わい深い作品です。