現在、兵庫県立美術館では、「生誕180年記念 富岡鉄斎―近代への架け橋―」展が開催され、前期に展示された清荒神清澄寺 鉄斎美術館所蔵のダイナミックな「富士山図」屏風など、鉄斎の奔放な筆致と豊かな彩色で描かれた作品が好評を博しています。後期(4月12日~5月8日)にも京都国立近代美術館蔵「富士遠望図・寒霞渓図」など大作が展示されています。
「最後の文人」といわれる鉄斎は、89歳の天寿を全うするまで、画はいうまでもなく多くの書を遺しました。現在でも京都の神社仏閣の門前には鉄斎の原跡による社寺名の石碑が建ち、老舗には鉄斎が揮毫した屋号の扁額が掲げられていて、その筆あとを目にすることができます。書に自信を持っていた鉄斎は「弘法大師(空海)がおられたら、書道の話がよう合うだろう」と語ったといいます。
特定の師を持つことなく和漢の先人の書を座右に置き、真摯に学び、自由でおおらかな鉄斎ならではの書を生みだしました。そして、その書は画とともに今なお我々を魅了します。
展覧会では、多くの印を用いた鉄斎が自ら刻し愛用した印も展示され、併せて楽しむことができます。
温かな春の清荒神さんで鉄斎の書に出会ってみませんか。