展示会場を入ると左側には楽家、右側には永楽家の作品が並び、「千家十職」の茶陶家の名品を間近に眺めることができます。
楽家は桃山時代の長次郎を祖とする京都の茶碗師で、利休好みの黒楽・赤楽茶碗を造り楽焼を創設。当代(15代楽吉左衛門)まで受け継がれています。その工法は、ろくろを使わない手捏ねで成形を行うもので、生み出された作品には千利休の侘びの思想が色濃く反映されています。5代宗入、6代左入、9代了入、11代慶入、15代吉左衛門の茶碗や13代惺入の香合が展示され、中でも名工といわれる了入の「団子之絵数印赤筒茶碗」、初代長次郎の写し、左入の「鉢開写黒茶碗」は見逃せません。
室町時代、西村宗禅を祖とする永楽家は、交趾、金襴手、仁清写など伝世品の写しを得意とし作品も多彩。藍が美しい11代保全の「伝来安南写茶碗」や、煌びやかな13代正全の「交趾松八角食籠」が目を引きます。
また、キャビネットには楽惺入の大ぶりの「琵琶香合」や、永楽妙全の鮮やかな「交趾写鹿香合」など珍しい作品が見られます。
気忙しい中、ホッと一息、名品に触れてみるのもいいのではないでしょうか。