戦前、日本美術・工芸に優れた芸術家に帝室技芸員と称された地位が帝室(皇室)より与えられ、戦後は重要無形文化財制度に引き継がれ、新たに芸能分野(歌舞伎・文楽・舞踊など)が加えられた人間国宝。史料館では卓越した技を備えた陶芸家、漆芸家、日本画家などの作品に加え、歌舞伎俳優で人間国宝の十五代目片岡仁左衛門、七代目尾上菊五郎の隈取や舞踊家で人間国宝の六世藤間勘十郎の色紙なども展示されています。
練達の技を魅せてくれるのは、清水卯一の渋い味わいの「灰釉茶碗」や十一代三輪休雪の「萩灰被水指」、三輪休和の「萩茶碗 銘 常盤」、そして笹の絵付けが鮮やかな十三代今泉今右衛門の「色鍋島笹文食籠」など人間国宝の作品と、帝室技芸員の香取秀真の美しいフォルムの「雙鳳文花瓶」、初代諏訪蘇山の格調ある「青磁紅魚花入」なども奥深い魅力を醸し出しています。
キャビネットに展示されている人間国宝・黒田辰秋の茶入「赤漆四稜茶器」は流れるようなユニークな形と鮮やかな赤が目を引きます。
陶芸家・荒川豊藏の作品は一点のみですが、藍の「染付松竹梅絵茶碗」(有田・今右衛門窯)も見逃がせません。受け継がれる練達の技を一点一点味わいながら観ることができるまたとない機会といえるでしょう。