清荒神清澄寺を訪ねて 歌手・深川和美さんと観る「蓮月と鉄斎」展

清荒神清澄寺を訪ねて 歌手・深川和美さんと観る「蓮月と鉄斎」展  2020年の掉尾を飾る「蓮月と鉄斎」展が12月22日まで清荒神清澄寺の境内にある鉄斎美術館別館史料館で開催されています。鉄斎は蓮月を人生の師として仰ぎ大きな影響を受け、多くの合作を遺しました。宝塚市民カレッジで童謡の指導をしている歌手の深川和美さんと前期展を鑑賞、合作を通し、凛と生きる女流歌人・大田垣蓮月尼と鉄斎の子弟愛に触れました。
開館時間 午前10時〜午後4時30分(入館は4時まで) 入館料 一般300円、高大生200円、小中生100円 (老人、障害者手帳提示の方は各々半額) 宝塚市米谷字清シ1 清荒神清澄寺山内tel.0797-84-9600

人と人が影響しあうことは素晴らしい

 清荒神を訪れ境内を散策し、竈の神様にお詣りすると、コロナ禍でざわついていた心がスキッとしました。秋が深まると境内にある樹齢4~500年と思われる二本の大銀杏が色づき壮観でしょう。大銀杏から本堂に向って左側に見える鉄斎美術館別館史料館はガラス張りの瀟洒な建物で驚きました。
 開催されている「蓮月と鉄斎」展は蓮月尼と、まだ若い頃の鉄斎の合作が展示されていて、世に言う鉄斎作品に見られる大胆な筆法のイメージとは違っています。蓮月がしたためた和歌の仮名文字に合うやさしいタッチで描かれているのが印象的です。
 鉄斎は隠棲した蓮月と同居し、作陶を手伝いながら多くの教えを受けたそうです。
 蓮月が手びねりした花器や急須、香炉には釘彫りで蓮月の歌が刻まれ、京都の土産物として人気だったようです。鉄斎31歳、蓮月76歳の合作、「藤娘図」(左の写真・左奥)は色彩も美しく惹かれました。「いにしへのてぶりゆかしきうつしゑの世にながれたる藤なみのはな」の和歌が先に詠まれたのか、鉄斎の画が先に描かれたのか、ちょっと気になるところです。
 絶筆といわれる明治8年筆の蓮月歌集も展示されていますが、蓮月が85歳で亡くなった後も鉄斎は長く供養をし、蓮月の肖像や幽居図などを描いたと聞きます。蓮月への敬愛の深さを感じずにはおれません。
 人と人が影響し合うことで、新しい世界が生まれる。私も歌手活動の中で他のアーティストとのコラボに魅力を感じています。
 鉄斎の年譜には大正12年、京都の困窮者に千円、関東大震災に千円寄付したことが記されていて、慈善活動を行っていた蓮月の生き方に学んだのだと子弟愛を超えたつながりを思いました。

清荒神清澄寺を訪ねて 歌手・深川和美さんと観る「蓮月と鉄斎」展

【プロフィール】
深川 和美
 神戸生まれ。京都市芸術大学音楽学部声楽専修卒業。パリへ留学後94年フランス音楽コンクールで総領事賞受賞、99年神戸市文化奨励賞受賞。95年の阪神淡路大震災以後、観客参加型コンサート「深川和美の童謡サロン」を主宰。宝塚を始め5か所の教室で指導。

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