史料館では、清荒神清澄寺山内にある茶室「春光庵」の格調高い茶道具が展示されています。この茶室は文人画家・富岡鉄斎の作品を蒐集し、「宗美一体」を唱えた37世法主光浄和上が、鉄斎翁を招くために大正12年に創建し、鉄斎夫人の「春子」と「光浄」から一字ずつをとって命名されました。茶室は五十数年後に改修されましたが、鉄斎が揮毫した扁額は今も当時のまま掛けられています。
茶道具の中でも桃山から江戸初期にかけての「古伊賀水指」は、ビードロ釉という自然釉薬が美しい緑色を浮かび上がらせ、今では作られていない貴重な作品で、なんとも言えない趣があります。同様に素朴ながら風情ある「信楽水指」も、また利休の「侘茶」を感じさせる作品です。
展示場の北面には千家十職の一人、楽家の9代楽了入作「楽名物茶碗写七種」が並べられ、養老・朝鴉・雁取・狂言袴・東岸・聖・逸馬と銘うつ、朱と黒の七つの茶碗が揃い見ごたえがあります。
キャビネットには珍しい扇形の「矢竹張扇香合」や笹模様が美しい蒔絵の「笹ノ絵平棗」に加え、四季に因んだ書が記された表千家11代家元・碌々斎作「四季茶杓」など名品が展示されています。
春うららかな清荒神清澄寺の「史料館」で、洗練された茶道具とともに「侘び」の世界に思いを馳せてみませんか。