年老いて益々筆に勢いがでる。
近代文人画の巨匠、富岡鉄斎は天保7年(1836)に生まれ、幕末に青年期を過ごし、明治9年から14年まで宮司を務めました。その後は精力的に画を描き多くの作品を遺したことは世に知られるところです。そして、当時としては数え89歳という天寿を全うし、大正13年(1924)12月31日に没しました。最後まで筆を執り、しかも力強い書画を遺しています。鉄斎は長寿を人生の喜びとし、多くの友人、知人の還暦や古希、喜寿、米寿という賀寿には、自ら描いた画を贈っています。89歳の夏ごろから自身の長寿を願い、89歳の作品に「九十翁」あるいは「九十叟」と自署しています。最晩年を示すこれらは「九十落款」といわれ老年を感じさせない自由な筆致と融通無碍な墨色、鮮やかな色彩に魅了されます。また、死の2ヶ月前に、親交のあった清澄寺の先々代法主・坂本光浄和上に納めた《前赤壁賦書》も残されています。「九十落款」の力強い作品は観る者を勇気づけ、私たちに生きる指針を示してくれるのではないでしょうか。
「鉄斎の九十歳落款」
前期 4月19日(月)~6月6日(日)
後期 6月14日(月)~8月1日(日)
会場 鉄斎美術館別館史料館
入館無料
開館時間 9時30分~16時30分
休館日 水曜日(但し4/28は開館)
展示替期間(4/12〜18)
※会期・開館時間は変更となる場合があります。詳しくは美術館ホームページをご覧ください。