清荒神清澄寺を訪ねて 宝塚日本画協会理事・竹田和子さんと観る「鉄斎の富士」

清荒神清澄寺を訪ねて 宝塚日本画協会理事・竹田和子さんと観る「鉄斎の富士」 清荒神清澄寺の境内にある桜の蕾もふくらみかけ、春の訪れを感じさせてくれます。鉄斎美術館別館史料館では4月11日まで「鉄斎の富士」後期展が開催され、傑作として名高い六曲一双屏風『富士山図』を始め、鉄斎が生涯を通して描き続けた富士の画が展示されています。作品はもとより40歳で富士登頂を果たした鉄斎が残したスケッチや画帖にも興味がそそられます。  日本画家で宝塚日本画協会理事の竹田和子さんと鉄斎の富士を通して表現することの意味と面白さを探りました。
開館時間 午前10時〜午後4時30分(入館は4時まで) 入館料 一般300円、高大生200円、小中生100円 (老人、障害者手帳提示の方は各々半額) 宝塚市米谷字清シ1 清荒神清澄寺山内tel.0797-84-9600


画を描く事は時代を描く事。
鉄斎の生きた時代が見えてくる。

 2000年に宝塚市展で鉄斎美術館賞を受賞し、その時に故村越館長と面識を得たのが、鉄斎美術館との出会いです。
 鉄斎の富士図と言えば六曲一双屏風『富士山図』が有名で、後期展では左隻の火口付近を描いた迫力ある作品が展示されていますが、私は『鎮国山帖』に注目しました。
 40歳で富士登頂を果たした鉄斎が自身の登山体験をスケッチした登嶽記をもとに登頂三年後に描き上げたという色彩豊かな画帖です。
 鉄斎は登山にあたって、敬愛する文人画家・池大雅が遺した巨細な富嶽図を拠り所にしたとされ、全景から頂上、遠望まで十九図ある画帖の第十七図の頂上略図は大雅の「富士山頂上図」を写したものだそうです。小さい画面にも関わらず、山の表現も人物表現もリアルで生き生きしていて情景が見えるようです。
 絵本のように楽しく、鉄斎の遊び心が伝わってきます。
 鉄斎の画は自由奔放な筆遣いが特徴だと思っていましたが、人物一人ひとりの繊細な表情もとても魅力的です。心酔していた大雅の人物表現に学んだのかもしれない、と思いました。
 大雅が篆刻家・高芙蓉、書家・韓大年と富士山に登った実話から鉄斎は『三老登嶽図』(右上写真)を描き、賛の自作の詩には、16回も登った大雅が描く富士は素晴らしいと書いています(実際は16回でなく、後に誤りだったことも書き遺している)。
 鉄斎が大雅研究をまとめた『大雅逸事巻』は前期展に展示されていましたが、歴史上貴重な資料といえるのではないでしょうか。
 画を描くということは、画家が生きたその時代を後世に伝え、残しておくという役目があるのではないかと、思うようになりました。
 鉄斎の画を観て、その思いを強くしました。

清荒神清澄寺を訪ねて 宝塚日本画協会理事・竹田和子さんと観る「鉄斎の富士」

【プロフィール】
竹田和子
2000年、02年宝塚市展鉄斎美術館賞受賞。03年創画会の大河内正夫に師事、宝塚日本画協会入会。06年全関西展入選、第33回秋季創画展入選。07年個展。08年第34回春季創画展入選。11年KIAF(韓国)、大阪芸術大学美術学科作家展出展。12年VERGE ART NYC出展。18~19年筍々会展出展。20年宝塚日本画協会35回記念展など。

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