東坡に傾倒し、東坡を画題とした作品を数多く遺す
中国の故事や逸話に多くを学び、画題とした富岡鉄斎(1836~1924)は明の文人・陶淵明や董其昌に影響を受けていますが、中でも北宋の政治家であり詩人、書家、画家であった蘇東坡(1037~1101)に傾倒し多くの作品を遺しています。
作品は80歳を超してから描かれたものが多く、人物画としては『蘇東坡像』や『蘇子笠屐図』があり、長い髭を蓄え杖を持つ東坡には存在感が漲っているようです。
東坡は自身の政治信条を貫き、左遷という憂き目にも遭います。鉄斎87歳の作品『東坡閑居図』は蘇東坡が黄州に配流されていた時の質素な住まいにも客が絶えないという故事を描いた図。東坡が使っていた遺愛の硯を用いて描いたことが賛に記されています。1088年、配流を解かれ、翰林院の学士に任ぜられ帰院したという東坡の波乱に満ちた人生のうち最も輝かしい場面を尊敬の念を込めて描いたのが『東坡帰院図』です。賛にはその時の逸話が宋の施宿の『東坡先生年譜』から引用されています。
東坡の作品や思想に深く傾倒していた鉄斎は東坡と誕生日が同じ12月19日だったことを大変喜び、「東坡同日生」という印章を作り、東坡を画題とした多くの作品に捺しているのも鉄斎らしく興味がそそられます。
蘇子笠屐図 大正6年 82歳
(鉄斎―故事をえがく―前期展示予定)
蘇子談癖図 大正10年 86歳
「東坡同日生」印(下)呉昌碩刻
《蘇子談癖図》より
帝室技芸員拝命祝賀会の朝大正7年 鉄斎・春子夫妻
鉄斎―故事をえがく―
会期 前期 9月21日(木)~10月31日(火)
後期 11月9日(木)~12月19日(火)
会場 鉄斎美術館別館史料館
開館時間 9時30分~16時30分
休館日 水曜 *入館無料
会期・開館時間は変更となる場合があります。
詳しくは美術館ホームページをご覧ください。