長寿は芸術を生み出すエネルギーの根源
鉄斎作品は、ほぼ年代順に展示されていますが、40歳代の若い頃の作品は線も細く繊細で、60歳以降の自由奔放で大胆な画とは趣がずいぶん異なっています。しかし、対象物を観る鋭いまなざしは若い作品にも感じられます。
幕末から明治という激動の時代に生きた鉄斎の生きざまが画にも表れているように思われます。理想に向きあい、自分の気持ちに忠実に生きた鉄斎の内面が、筆のいきいきしたタッチに感じ取れるような気がします。画を描く上ではとても大切なことです。
現代の作家でも80歳を過ぎると勢いがなくなってくるものですが、鉄斎は全く枯れた感じが無く、充実感が増しているのは驚嘆に値します。鉄斎は長寿を喜びとし、自らも数え89歳まで長生きし、亡くなる数日前まで筆を取っていたと聞き驚きました。二カ月前に描いたという最晩年の「水墨清趣図」(前期展示、九鬼さんの左)は墨一色の山水画ですが、墨の濃淡が美しく、力強い素晴らしい作品。とても感動しました。清荒神への来山が叶わなかった鉄斎が清荒神の参道を想像して描いたといわれる画だと伺いました。清荒神を仙境に見立てて描いたのでしょうか。
私も絵を描くために長寿を目指し、100歳まで生きたいと思っています。それが制作意欲の根源です。
また、鉄斎作品には落款以外にも画に合わせて複数の印が捺されていて興をそそられますが、洋画家の中でも篆刻家として知られる中川一政は、絵においても鉄斎に多大な影響を受けていると言えます。梅原龍三郎の絵にも鉄斎を感じることがあります。
私も額装の裏には必ず落款を押していて、絵のテーマでもある日本の伝統、和の心を大切にし、描き続けたいと考えています。
鉄斎に学ぶことは多いのではないでしょうか。
会期 後期 ~5月2日(火)
開館時間 9時30分~16時30分(無料)
休館日 水曜
*会期・開館時間は変更となる場合があります。
詳しくは美術館ホームページをご覧ください。