鉄斎に見る文人の理想、詩書画三絶
文人画は賛を読み込まないと画の良さが伝わりにくいので現代人には少しハードルが高く、私も鉄斎に触れる機会は少なかったのですが、「史料館」の展示では鉄斎がまず読んでほしいと述べていた賛がちゃんと解説されているので、それを読めば画への理解も深まり、画の面白さが味わえます。文人画は詩書画三絶と言われ、三つが融合して作品になっていますが、現代はこの三つが独立した芸術になっているので、鉄斎が最後の文人と評されるのもしかりです。
私は古代紫などの植物染色の研究をしていて古代が近いところにあるのですが、鉄斎の仙境図『蓬莱山図』や仙女・西王母の桃を描いた『千歳桃図』などを観ていると鉄斎も古代を身近に感じていたのではないかと、共感を覚えました。
後期にも展示される蘇東坡の詩『前赤壁賦書』は数え八十九歳に書かれ、三冊分が清澄寺に贈られたと伺いましたが、老いて益々筆に勢いがあるのに驚かされます。後期作品の『富而不驕図』は色鮮やかな牡丹がモダンで印象に残っている作品です。
鉄斎は、その生涯を辿ると模写から生まれた知識の蓄積が独自の作品につながり、生涯学び続けた生き方が見えてきます。
多癖だったという鉄斎の『文人多癖帖』にはかかしを象った「案山子」印が捺されていて印癖、鉄斎の遊び心を感じることができました。
京都国立近代美術館にも展示されていた清荒神清澄寺 鉄斎美術館所蔵の『勾白字詩七絶』は文字が絵で表現され、遊び心が溢れる作品。心惹かれる鉄斎作品のひとつです。
鉄斎の九十歳落款
会 期 ~7月9日(火)
会 場 鉄斎美術館別館史料館
開館時間 9時30分~16時30分(無料)
休 館 水曜日 展示替期間