故事・逸話を鉄斎の画から読み解くと楽しい
鉄斎は「わしの画を見るときはまず賛を読んでほしい」と語り、画の技量より、画が表す意味に重きをおいていました。学者と自負していたのも頷けます。故事や伝説はもとより、文献を典拠とした逸話を描いた作品は多岐にわたります。
鉄斎は老壮思想を重んじ、俗塵を離れた生き方を理想とし、精神世界を表した画を多く描いています。
前期に展示されている『老子出関図』は道家の祖とされる中国周代の哲学者・老子が、隠居のため牛に乗って周を去る場面を描いていて、賛には『史記』の老子伝の略が記されています。隠居をする際に函谷関を通った時、関所の長官に請われ上下二篇五千余言の書物を書いて去ったとの故事が遺されています。対となる『淵明遊興図』は中国東晋の詩人、陶淵明が詩文「帰去来辞」をつくって役人の職務を去り、帰郷して田園生活を送ったという逸話をもとに、子どもに網代の籠を担がせ蘆山に遊ぶ姿を描き、賛には淵明の詩と伝記が記されています。
色彩の鮮かさが目を引く『蘭亭曲水図』は、書聖と称される王羲之が文人を招いた蘭亭曲水の宴で詠まれた詩文をまとめ、その序文とした有名な「蘭亭序」が賛に引用されています。中国故事の他、日本の故事を題材にした作品も展示されている秋季展は画とともに賛も見逃せません。
老子出関図 明治時代
淵明遊興図 明治時
鉄斎―故事をえがく―
会期 前期 9月21日(木)~10月31日(火)
後期 11月9日(木)~12月19日(火)
会場 鉄斎美術館別館史料館
開館時間 9時30分~16時30分
休館日 水曜 *入館無料
会期・開館時間は変更となる場合があります。
詳しくは美術館ホームページをご覧ください。