清荒神清澄寺を訪ねて シリーズ・富岡鉄斎を語る その二 仏像彫刻家・水戸川櫻華さん

清荒神清澄寺を訪ねて シリーズ・富岡鉄斎を語る その二 仏像彫刻家・水戸川櫻華さん

 「富岡鉄斎を語る」二回目は宝塚在住の仏像彫刻家で宝塚逆瀬川のアピアカルチャーを始め、神戸、西宮、大阪の教室で彫刻を指導している水戸川櫻華さん。「鉄斎の画業七十年」展(終了)を鑑賞、 水戸川さんの視点で鉄斎観を語っていただきました。

鉄斎は謎多き文人画家
鉄斎が若い頃は幕末の混乱期で、文人・池大雅や師と仰ぐ、和歌の大家・大田垣蓮月の影響を受け、勤王思想に傾倒、国事に奔走したと聞いています。厳しい環境をくぐってきたのではないかと想像できるのですが、画集で『富士遠望図・寒霞渓図』(六曲一双・京都国立近代美術館蔵)を観た時に「不必要なものが削ぎ落され、研ぎ澄まされた」富士に、若い頃の体験が関係しているのかもしれない、如何なる胸中から生まれた作品なのか知りたくなり、本画を観たいと思っていました。70歳以降の自由奔放な筆遣いとは全くといっていいほど違っているのですが、70歳の作品と知り、私の中で鉄斎への謎が深まっています。
機会があれば是非とも観たい作品です。
鑑賞した「鉄斎の画業七十年~画を以て法を説く~」の展示作品では、蓮を墨と代赭で描いた『水郷清趣図』が印象的でした。余白にはカワセミが餌を加えて飛ぶ姿が描かれ、構図の妙を感じます。
俗塵を離れた文人の理想として描かれている86歳の『渓居清適図』の讃、「耳は貝にして目は昏けれど腕には神有り」は、私の師匠である朋林が常に言っていた「目が見えず、耳が聞こえず、腕が利かなくなっても心で仏像は彫ることができる」という言葉と重なります。仏像を彫る腕にも「神有り」との思いを新たにしました。
鉄斎は文人を始め、学者や陶芸家、篆刻家の他に職人など様々なジャンルの専門家とも交わり、知識を広げ独自の画風を確立していったのだと想像します。様々な側面を併せ持つ表現者、鉄斎は私にとって謎多き人物です。


前衛書家・森田子龍揮毫の扁額「聖光殿」が掲げられている鉄斎美術館の前で


神官時代の鉄斎(43歳)

清荒神清澄寺を訪ねて シリーズ・富岡鉄斎を語る その二 仏像彫刻家・水戸川櫻華さん

次回展覧会
蓮月没後150年 鉄斎が敬慕した大田垣蓮月
2025年9月16日~10月26日
*会場は鉄斎美術館別館「史料館」入場無料

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