1975年、清荒神清澄寺境内に開館した鉄斎美術館は今年の4月で開館50周年を迎えます。鉄斎美術館では2000点を超すコレクションの中から、これまで様々なテーマで鉄斎の画や書、器玩、粉本(摸写)などが紹介されてきました。約6年ぶりに鉄斎美術館本館で開催される本展では19歳から最晩年89歳まで、70年の画業を辿り各年代の貴重な作品が一堂に展示されます。
約6年ぶりに本館で開催される
開館五十周年記念展
清荒神清澄寺の先々代法主坂本光浄和上が「宗美一体」を説き、蒐集した鉄斎コレクションを通年公開するために先代法主坂本光聰和上によって建設された鉄斎美術館。その精神は現法主坂本光謙和上に引き継がれ、25周年には新収蔵庫が完成、開館30周年には「鉄斎―仙境への道」、35周年には「鉄斎の富士」、40周年には「万巻の書を読み、万里の路を行く」をテーマにした展覧会が開催されました。
50周年を記念する展覧会では近代文人画の巨匠・富岡鉄斎(1839~1924)の70年の画業を年代ごとに辿っています。50歳代以降の自由闊達な作品が注目される鉄斎ですが、19歳の時に摸写した『雉子図』が展示され、師を持たず古画を摸し、古書を読破することでさまざまな技法を習得し、独自の画境を拓くまでになった鉄斎の最初期をも垣間見ることができます。
若い頃の細い線から力強い線へと独自の変化を遂げていった50代、60代、そして真骨頂ともされる70代以降から最晩年までの自由闊達な筆で描かれた水墨画。中でも俗塵を離れ、精神世界に生きる仙人が棲む理想郷を画いた仙境図は見逃すことができません。
『瀛洲僊境図』には最晩年を表す九十歳落款が捺されています。鉄斎は「画を以て法を説く」という印章を愛用していて、鉄斎の画には中国故事や日本の古書に学んだ教訓的な画賛が多く、難解ともいえますが、展示作品に添えられた訓読を参考にすれば鉄斎の豊富な学識を知ることができ、ユーモアをも感じることができ興味が沸いてきます。
独学で画を学び、独自の画境に達した鉄斎の作品は現代を生きる我々に貴重なメッセージを投げかけているのではないでしょうか? 画業70年の作品を通して、鉄斎に出会える展覧会です。
雉子図 1854年 19歳
開館五十周年記念
鉄斎の画業七十年―画を以て法を説く―
会 期:4月1日(火)~5月4日(日)
開館時間:10時~16時30分(入館は16時)
休館日:月曜日
入館料:一般600円、高大生400円、
小中生200円
*老人・障害者手帳提示の方、各々半額