鉄斎没後100年に当たる2024年、春季展「鉄斎の九十歳落款」に続く秋季展「鉄斎―器玩にみる交遊録―」が19日から開催されます。文人の嗜みの一つである煎茶に親しんだ鉄斎は煎茶道具に絵付けをするなど、名工との合作による陶芸品や工芸品、調度品を数多く遺しています。展覧会では鉄斎の幅広い交流、名工との深いつながりを見ることができます。
優れた造形の品に、鉄斎の自由闊達な筆が
相和する作品から見えてくるものは…
鉄斎は若い頃には歌人で陶芸家でもあった大田垣蓮月に師事し、和歌に画を添えた蓮月との合作を世に出しています。その後、独自の画を極めていった鉄斎は多くの陶芸家や篆刻家、指物師、金工家などとも交流を持ち、主に60歳を過ぎてから多くの合作を遺しています。
煎茶道の祖といわれる売茶翁高遊外に傾倒していた鉄斎は自らも煎茶に親しみ、茶を画題とした作品を遺していますが、名工との合作では茶道具が一番多く、次に文房四宝といわれる文房具類が続きます。焼物では四代・五代・六代陶工清水六兵衞、二代三浦竹泉、初代諏訪蘇山との交流があり、茶器の他、茶入れや菓子鉢など多くの煎茶道具に絵付けした作品があります。中でも煎茶皆具一式は秀逸な作品二十五点で鉄斎手造りの趣ある茶器も含まれており、鉄斎が文人として如何に煎茶に親しんでいたかを物語っています。
器玩の中には工芸品も多く指物師、中村菊斎との合作には桐盆や茶盒、器局があり、鉄斎が自由奔放に絵を添えています。作品からは名工との親交の深さと信頼関係を窺うことが出来るのではないでしょうか。また、庸軒流の茶道に親しんでいた妻の春子夫人の煎茶碗に絵を添えた微笑ましい合作も観ることが出来ます。
合作以外に、鉄斎が家族や友人などに贈った作品「楳花山茶水僊華図」「帝者師太公望釣魚図」も併せて展示されています。
《四君子絵印箪笥》 大正10年 富岡鉄斎筆
《高遊外詩画染付菓子鉢》 大正10年
初代諏訪蘇山作・富岡鉄斎筆
鉄斎―器玩にみる交遊録―
会 期:前期9月19日(木)~10月29日(火)
後期11月7日(木)~12月17日(火)
会 場:鉄斎美術館別館「史料館」
開館時間:9時30分~16時30分(無料)
休 館:水曜日 展示替期間