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萎縮性膣炎

 女性の平均寿命が伸びるにつれ、増加している病気の一つに老人性膣炎があります。
 本来、腟内は温かく湿っており、微生物の増殖に適した条件がそろっています。健康な女性の場合は、乳酸菌が酸を分泌し、微生物の繁殖を抑えています。しかし、閉経期を過ぎ、エストロゲンが減少すると、腟の自浄作用が衰え細菌に感染したり、膣粘膜が萎縮し、傷つきやすくなって出血したりします。このようなエストロゲンの欠乏に伴い起こる炎症を萎縮性膣炎(老人性膣炎)と呼びます。
 自覚症状としては膿や血が混じった黄色からピンク色のおりものが出たり、悪臭を伴ったりということで来院されます。その他、膣の不快感、乾燥感、かゆみ、性交痛などの症状があれば要注意です。
 原因はエストロゲンの不足によるものですので、治療はエストロゲンの補充を行います。また、感染を起こしている場合は抗生物質の投薬を行ったり、その他、それぞれの症状に適した膣錠や軟膏を使用したりします。これらの治療で殆どの方が比較的、短期間でよくなります。
 閉経後には程度の差はあるものの、こういったトラブルは多くみられます。ただし、おりものに血が混じっている場合には子宮がん(頚部がん・体部がん・その他のがん)の可能性もありますので、まずは悪性腫瘍と区別を行うため、お早めに受診するようにしてください。

 諸般の事情により今回が最終回となります。長い間ご愛読いただき、誠にありがとうございました。

大西泰彦(おおにしやすひこ)先生
奈良医大付属病院、県立西宮病院などを経て市立松原病院では副院長兼産婦人科部長として勤務。現在、宝塚市にて大西レディスクリニックを開業、同院長。
http://www6.ocn.ne.jp/~gyn/
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