「喉がつまる」「喉の圧迫感」「首を絞められて息がしにくい感じ」「喉に異物が詰まった感じ」、このような訴えで来院される方がおられます。この症状、「ヒステリー球」というのですが、あまり聞いたことがないのではないでしょうか。内科や耳鼻咽喉科で検査しても何も異常はなく、原因不明とされることも多いようですが、2000年ほど前の古書にもある症状で、漢方医学では「梅核気(ばいかくき)」と呼ばれています。つまり、梅の種がのどにつまったように感じる症状です。特に女性に訴えが多く、男性に比べて約5倍、特に更年期の女性に多いようです。
このヒステリー球、聞こえは悪いですがもちろんヒステリーの方だけに現れるものではなく、ストレスや不安・心配事などがあると誰にでも起こり得るものです。
原因不明となると、不安に感じられるかもしれませんが、ストレスと関係があるようです。実際、不安時、緊張時、落ち込んだ時、疲れている時に発症することが多いです。ストレスの原因を容易に取り除くことは困難ですが、この症状には漢方薬の「半夏厚朴湯」が有効で、多くの方が比較的、速やかに改善が得られています。半夏厚朴湯には、鎮静作用、精神安定作用があり、また鎮吐作用、去痰作用、健胃作用を持つため、喉の違和感には効果が期待できます。症状が重い場合は数週間服薬しなければなりませんが、副作用も少ないため安心して続けることができます。
漢方薬は症状だけでなくその人の「証」によっても合うものが異なります。半夏厚朴湯は薬局でも購入できますが、しばらく服薬して症状に変化がない場合は主治医に相談して下さい。