清荒神清澄寺を訪ねて 鉄斎美術館別館史料館 「鉄斎の九十歳落款」展開催中

清荒神清澄寺を訪ねて 鉄斎美術館別館史料館 「鉄斎の九十歳落款」展開催中

 最後の文人と評される富岡鉄斎の没後100年に因んだ大規模な展覧会「没後100年 富岡鉄斎」が京都国立近代美術館で5月26日まで開催され、好評を博していますが (5月号で紹介)、鉄斎作品・資料を2000点以上所蔵する清荒神清澄寺の鉄斎美術館 別館 「史料館」では7月9日まで「鉄斎の九十歳落款」展が開催されています。数え89歳で描いたとは思えない勢いのある筆致、鉄斎独特の世界観を間近に感じることができます。

没する一カ月前に書いた力強い「前赤壁賦」
 長寿を祝い、慶びとした鉄斎は自身も数え89歳まで描き続け、数え90歳を迎える年を目前にした大正13年12月31日に亡くなりました。
 鉄斎は大正13年の夏頃から落款に「九十叟」「九十翁」などと記していて、大正14年の正月掛け用にと『瀛洲僊境図』を描いていたことから、正月を迎えるつもりであったことも伺い知れます。
清荒神を訪ねて 鉄斎美術館別館史料館
「鉄斎の九十歳落款」展開催中


 前期展は5月21日までですが、掛け軸6点のほか、扇面や書、画帖などが展示され、最晩年の貴重な作品を観ることができます。徳川家康公の11の教えを木に見立て鉄斎独特の墨のタッチで描いた『立身木図』。人は類をもって集まる、という賛を書いた山水図『君子清趣図』。
 三千年に一度実をつけるという伝説の仙女・西王母の桃を描いた不老長寿を願う『千歳桃図』には篆刻家・奥村竹亭が刻した「老いて益々学ぶ」の印が捺されています。
 清荒神清澄寺の三十七世法主・坂本光浄和上は鉄斎の作品に感銘を受け、晩年の鉄斎と親交を得て京都室町を訪ね交流を重ねます。
 高齢のため、残念ながら鉄斎の来山は叶いませんでしたが、鉄斎は清荒神の参道を昇り龍に見立てて描いた墨一色の『昇天龍図』に自作の和歌を添えて贈るなど、最晩年の貴重な作品がお寺に贈られました。
 山号・蓬莱山に因む『蓬莱山図』や釈迦、観音、老子、孔子、達磨など聖者をユーモラスに描いた『聖者舟遊図』のほか光浄和上の依頼で、亡くなる一カ月前に書いた手習い書『前赤壁賦』はその力強さに圧倒されるほどです。鉄斎の印癖を垣間見ることができる『文人多癖図』帖と共に後期も展示されます。
 『鉄斎の九十歳落款』から見えてくる文人鉄斎が至った自在の境地とは如何に。

清荒神清澄寺を訪ねて 鉄斎美術館別館史料館 「鉄斎の九十歳落款」展開催中

鉄斎の九十歳落款
会  期 前期 ~5月21日(火)
     後期 5月30日(木)~7月9日(火)
会  場 鉄斎美術館別館史料館
開館時間 9時30分~16時30分(無料)
休  館 水曜日 展示替期間

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