境内にある二本の大銀杏が色づいた清荒神清澄寺。紅葉の中、鉄斎美術館別館史料館では「鉄斎―故事をえがく―」後期展が9日から始まり、19日には史料館前の広場では秋のお茶会が開催されます。 独特の色彩で存在感を放つ抽象画家・柴田知佳子さんと作品(前期展)を鑑賞。中国、日本の故事や説話に題材を得た、鉄斎ならではの絵画表現に接し、その面白さを堪能しました。
鉄斎の画には深い物語性が潜んでいる。
鉄斎美術館の別館史料館には以前、現代美術とも共通性のある前衛書家・森田子龍展を観に来たことがありますが、鉄斎作品は余り観る機会が無かったので、この企画展はとても楽しみにしていました。
やはり、書聖と言われる王羲之の有名な蘭亭序が賛に書かれている『蘭亭曲水図』は色鮮やかで印象に残ります。ジグザグの山水的構図もさることながら、蘭亭に招かれ詩文を詠む文人らがそれぞれに生き生きと描かれているのに驚きました。
関連資料として展示されていた『蘭亭図考巻』はクロッキーのように墨で描かれた人物にリアリティがあって北斎漫画のようで観ていて楽しくなります。
55歳の作品『北野大茶湯図巻』は秀吉が北野天満宮で催した茶会を絵巻物のように描いていて、千利休がどこの茶席か、探したくなりますね。
若い頃の鉄斎が画の師匠として手ほどきを受けたという大和絵の浮田一蕙の影響がうかがえる大和絵風の画だと、解説して頂きました。後期展には北野大茶会の額(上の図版)が展示されるそうです。
特に心惹かれたのは85歳の作品『陳希夷僊窩図』。道教の仙人が鶴を従え洞窟で楽しそうに煎茶を点てている画です。細長い縦の画面いっぱいに自由に描かれていて、仙人の表情も豊かで面白く、鉄斎らしい作品だと思いました。
86歳で描いた『蘇子談癖図』には物語性を感じます。流刑された蘇東坡が、近くの人を庵に集め幽霊話などをして談笑している図ですが、そこに何かを運んでいる子どもの様子にも動きがあり、談笑の声までも聞こえてくるようです。
会場の史料館はガラス張りで明るく、入りやすい雰囲気なのでこれからは企画展ごとに観に行きたいですね。鉄斎の画のことを知れば知るほど面白くなりそうです。
来年は鉄斎没後100年に当たるそうなので記念の展覧会に期待したいです。
【プロフィール】
柴田知佳子:1968年大阪生まれ。91年神戸大学教育学部美術科卒業。94年同大学院修了後、現代美術作家として活動に入り95年ギャラリー白で初個展。2021年令和2年度亀高文子記念・赤艸社賞受賞。大阪、兵庫を中心に個展、グループ展など多数。宝塚市在住
鉄斎―故事をえがく―
会 期 後期 ~12月19日(火)
会 場 鉄斎美術館別館史料館
開館時間 9時30分~16時30分
休館日 水曜 *入館無料
会期・開館時間は変更となる場合があります。
詳しくは美術館ホームページをご覧ください。