今秋の9月21日から開催される展覧会「鉄斎―故事をえがく―」では、中国、日本の故事や伝説はもとより、文献を典拠とした逸話などを題材に描いた鉄斎の真骨頂と思われる作品が展示されます。この機会に鉄斎が「わしの画を見るときはまず賛を読んでほしい」と語った「賛」を読み解いてみたいものです。
鉄斎にとって故事・逸話は教科書。
鉄斎は画家として日本の絵画史に名を遺していますが、自身は若い頃より学者を志し尊敬する中国明の文人・董其昌の「万巻の書を読み、万里の路を往く」を座右の銘とし、故事や伝説からも多くを学びました。
敬慕する聖人や神仏についても各地に伝わる遺像や諸書の挿図や拓本などを調べ、個性的で表情豊かな人物像を描いています。深く広い見識を得た鉄斎は画を表現の手段とし、賛を添えた多くの作品を遺しました。
ポスターに使用されている中国故事を画題とした『蘭亭曲水図』(前期展示)は鉄斎49歳の時の作品。書聖と称される王羲之が41人の文人を集めて催した蘭亭曲水の宴で、それぞれが詠んだ詩文をまとめ、自身が序をしたためたのが「蘭亭序」で、書の手本としても有名です。鉄斎は賛にその序を引用しています。
88歳の作品『嫦娥奔月図』(後期展示)は、嫦娥が崑崙山に棲む不老不死の女仙、西王母から三千年に一度みのるとされる西王母の桃を盗んで月へ逃げたという故事が画題になっています。
鉄斎の画にいざなわれ、賛の訓読と解説をじっくり読みながら、中国や日本の故事の旅を楽しんでみてはいかがでしょう。
休師訪丿貫図 大正4年 80歳
鉄斎―故事をえがく―
会期 前期 9月21日(木)~10月31日(火)
後期 11月9日(木)~12月19日(火)
会場 鉄斎美術館別館史料館
開館時間 9時30分~16時30分
休館日 水曜 *入館無料
会期・開館時間は変更となる場合があります。
詳しくは美術館ホームページをご覧ください。