清荒神清澄寺を訪ねて 特別インタビュー 鉄斎美術館学芸員に聞く美術館のバックヤード Ⅱ

清荒神清澄寺を訪ねて 特別インタビュー 鉄斎美術館学芸員に聞く美術館のバックヤード Ⅱ

清荒神清澄寺では2月3日の節分には山門横に大福火が焚かれ古いお札、お守りや吉兆などを納め、参拝者は福をいただきました。境内の鉄斎美術館別館史料館では1月26日から「鉄斎―山水に遊ぶー」展が開催されています。テーマ設定から展示に至る過程を学芸員の細里わか奈さんに聞きました。

鉄斎作品からは様々なテーマが湧いてくる。
――鉄斎美術館では年間2回から3回企画展を開催されていますが、テーマはどのように決められるのですか。
 まず、春と秋では趣を変えるようにしていて、春は1月末から開催するのでおめでたい題材や清荒神に因んだ題材を選びます。例えば春は「鉄斎の七福神」(2019)、「清荒神と鉄斎」(2020)、「鉄斎の富士」(2021)、秋は「天子知名―皇室と鉄斎」(2019)、「蓮月と鉄斎」(2020)、「鉄斎の仏画」(2021)などです。
 鉄斎は師を持たなかったことから技法も多様で分野も山水画、仏画、人物画、風俗画など多彩。中国の故事から日本の史蹟や風景、民俗まであらゆる画題を描いているのでテーマの切口は色々あります。
 「鉄斎―山水に遊ぶ―」は予てよりリクエストがあったものの、しばらく展示できていなかった「茂松清泉図」を展示したいという思いから着想しました。また、鉄斎にとって代表的な画題である仙境図を中心とした企画展を史料館では開催できていなかったため、それらを中心に山水画を集めることにしました。
――テーマが決まれば、展示作品を膨大な収蔵作品から選ぶことになります。
 企画を決定次第、カードにしている作品リストから30点ほど選び、ポスターやチラシに使用するメインの作品2点をまず決めます。掛軸なら12点に絞り込み、実際に収蔵庫でも確認し、平面ケースに展示する画帖や資料など小作品も併せて選び、最終決定します。前期、後期のバランスを考慮し、展示の配置を決め図面を作成、出品リストを作ります。配置は作品の制作年を基本としていますが、実際に会場に並べて作品の色のバランスや表具の色調なども見ながら、若干変わることもあります。解説文を仕上げるとほぼ完成、メインの作品はガラスケースに透明シールの解説文を貼ります。解りやすいと好評いただいています。
――開催日3日前に収蔵庫から会場に作品を搬入して、いよいよ展示となります。
 美術作品専門の業者の方が搬入し、図面通りに作品を設置していきますが、学芸員が全体のバランスを見て、作品の高さをミリ単位で調整します。左右の傾きを微調整したり、細心の注意を払いながらの作業になります。「鉄斎―山水に遊ぶ―」では、文人の理想とする仙境に遊ぶ鉄斎の胸中に触れていただければ嬉しいです。
――バックヤードも想像しながらじっくり鑑賞したいと思います。


茂松清泉図 大正8年(84歳)

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鉄斎―山水に遊ぶ―
会場 鉄斎美術館別館 史料館
会期 前期 1月26日(木)~3月14日(火)
   後期 3月23日(木)~5月2日(火)
開館時間 9時30分~16時30分(無料) 休館日 水曜
*会期・開館時間は変更となる場合があります。詳しくは美術館ホームページをご覧ください。

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