清荒神清澄寺を訪ねて 特別インタビュー 鉄斎美術館学芸員に聞く美術館のバックヤード Ⅰ

清荒神清澄寺を訪ねて 特別インタビュー 鉄斎美術館学芸員に聞く美術館のバックヤード Ⅰ

初詣の賑わいが続く清荒神境内。1月26日からは境内にある鉄斎美術館別館史料館で「鉄斎―山水に遊ぶ―」展が開催されます。1月号では展示の概要を紹介していますが、開催に至るまでには様々な作業があり、学芸員がほぼ全てを担っています。学芸員の細里わか奈さんに美術館のバックヤード、展示に至るまでの経緯を二回にわたり聞きました。

作品の保存・管理は美術館の重要な役目

――鉄斎美術館には開館25周年に完成した立派な収蔵庫があり、厳重な管理のもと膨大な絵画や書の作品が保存されています。何点余り収蔵されているのでしょうか。
 軸、額、屏風など絵画作品が約600点、粉本(摸写)や器玩(道具類)などが約100点、書約80点と直筆の筆録や書簡、愛蔵品などを加えると2000点以上で、それ以外に未整理の資料などもあります。資料などは書庫と倉庫で保管し、主な作品は収蔵庫で保管しています。
 床面積206・5㎡の収蔵庫は室温20度、湿度50%を保つように24時間空調を管理し、内壁は湿度を安定させる効果のある無垢のシオジ、床にはブナ。扉は2時間の耐火性、消化設備は窒素ガスを採用しています。撮影などに使える前室も備えています。
――作品を展示するにあたって収蔵庫から展示会場に移し、展示後収蔵庫に戻すまでの作業の中で学芸員が担う重要な役割はなんでしょうか。
 鉄斎作品は史料館の展示の他に全国への貸し出しもあり、その際には双方の学芸員が収蔵庫から出す貸出時と展示後の返却時に傷みなどがないか二度作品を点検します。
 作品の移動や設置は美術品を扱う専門の運送業者に依頼しますが、その他の作業は学芸員が担います。2016年には兵庫県立美術館で開催した富岡鉄斎生誕180年記念展(共催)に大作を始めかなりの点数を貸し出しました。他館への貸し出しや史料館での展示の後は環境の急な変化で作品が傷まないよう収蔵庫の前室に一時置いてから桐箱に収め収蔵庫に移します。
 展示した作品は劣化を防ぐために1年間は休ませるようにしています。また、季節や天候によって作業の日を選ぶこともあります。
――展示の企画だけではなく、保存や管理も大切な仕事だということが分かりました。広報も重要な仕事ですね。
 展示の4ヶ月前には年間スケジュールを決めポスターとチラシの制作のため、ビジュアル用に作品を何点か選びます。企画の構想段階でメインになる作品は決めていますが、季節感や作品の並びなども考慮して決定し、説明文を添えて、デザイナーに依頼します。全国の各美術館や図書館など宝塚市の関係機関、清荒神参道、宝塚ソリオなどに配布し、企画展の開催前にはDMハガキも作成します。
 清荒神清澄寺のホームページにもアップしています。
※次号では年2回の企画展の構想段階から作品選び、会場のレイアウト決定までを紹介します。


「鉄斎 歴訪の旅」展の作品搬出は学芸員が行い、平面ケースに展示されていた『扶桑勝区帖』は桐箱に納められた後、布を巻き漆塗りの箱に収納

清荒神清澄寺を訪ねて 特別インタビュー 鉄斎美術館学芸員に聞く美術館のバックヤード Ⅰ

鉄斎―山水に遊ぶ―
会場 鉄斎美術館別館 史料館
会期 前期 1月26日(木)~3月14日(火)
   後期 3月23日(木)~5月2日(火)
開館時間 9時30分~16時30分(無料)
休館日 水曜
*会期・開館時間は変更となる場合があります。
 詳しくは美術館ホームページをご覧ください。

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