ウィルキンソンと近代宝塚 著者 鈴木 博

発行日  2024年3月9日
著 者  鈴木 博
装 幀  阿部一弘
発行所  あさひ高速印刷株式会社出版部
発行者  岡 達也
印刷製本 あさひ高速印刷株式会社
定 価  1320円(本体1200円+税)
A5判 124ページ ソフトカバー

 3月9日宝塚市立中央図書館で「たからづかデジタルミュージアム」活用講座が開催され、「近代の旧温泉と当時の旅館・泉山楼」について解説した郷土史家の鈴木博さんが「ウィルキンソン タンサンと宝塚」に続く書籍「ウィルキンソンと近代宝塚」を3月9日に上梓した。

 宝塚在住の郷土史家・鈴木博さんは2011年から、ブログで「近代宝塚歴史紀行」を発信しているが、それらを基に市立図書館事業である「みんなのたからづかマチ文庫」に参加し、タンサンと宝塚のかかわりについて調べた歴史を2017年に「ウィルキンソン・タンサンと宝塚」という冊子にまとめた。2019年には改訂新版を発行し、2021年には宝塚市教育委員会発行の市史研究紀要たからづか第30号に「『ウィルキンソン タンサン』と宝塚」を執筆。
 第3弾となる本書は寳來橋に佇むクリフォード・ウィルキンソンと淑女が描かれたレトロなイラストの表紙がまず目を引く。二部構成になっていて一部がウィルキンソン タンサンとファミリーの歴史、二部が近代宝塚歴史紀行で、2021年1月号から22年12月号までウィズたからづかに掲載した24回分が一部加筆され収録されている。鈴木氏が海外のオークションで手に入れた貴重な写真や資料など一部には約100点が収められ宝塚の歴史的資料として、またタンサン飲料の日本における歴史としても価値が高い書籍になっている。
 ウィルキンソン タンサンの歴史における鈴木氏の偉業は、これまで西宮市生瀬と思われていた発祥の地が宝塚だったことを紅葉谷の一枚の写真から突き止めたことだ。紅葉谷の瓶詰工場から木箱に詰め「TANSAN」と書かれた荷車で運び出される光景が従業員と共に写っている。外国人向けに神戸港から英国などに輸出されていた。工場の裏手には外国人向けに「HOTEL TANSAN」が建てられ、その写真も掲載されていて興味深い。宝塚ホテル誕生の36年前に開業した阪神間初の洋式ホテルであった。
 明治30年代中頃には新たな鉱泉を生瀬に発見、工場は生瀬(現西宮市)に移転、英国風のモダンな工場で1990年まで生産されていた。本書には逆瀬川にあった自邸や妻・くまが写るファミリーの貴重な写真が収録され、著者の鈴木氏は英国在住のウィルキンソンの曾孫に当たるレズリーさんとの交流も生まれているという。宝塚発祥のウィルキンソンの歴史を紐解くと共に近代宝塚の歴史に触れることが出来る一冊と言えるだろう。
 ブックランドサンクス宝塚ソリオ店と宝塚市立文化芸術センター・ミュージアムショップで発売中。

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