発 行 平成26年10月5日
著 者 角川英男
発行者 岡 達也
発 行 あさひ高速印刷㈱出版部
印刷・製本 あさひ高速印刷㈱
四六判 177ページ 並製本
定 価 1,200円+税
退職後、執筆をライフワークとしている角川さんが平成17年に発行した第1作目は、京都の史跡に足を運び書き上げた随筆「徒然に歴史を巡る―京の遺跡を歩いて―」。有名無名を問わず自分が興味を持って訪れた史跡についてまとめ、作品を手にした元同僚からも好評を得た。翌年の平成18年には歴史小説に挑戦、大化の改新から平安中期頃の大和政権下、東北や南九州の埋もれた歴史に焦点を当てた「辺境の民 隼人と蝦夷の血涙」を、2年後の平成20年には、歴史小説を書いてみたいと、室町幕府を開いた足利尊氏の知られざる人間像に光を当てた「篠村に足利の旗が翻る」を、さらに平成22年、室町時代中期の武将で応仁の乱後に越前を平定した戦国武将、朝倉孝景の生涯を歴史小説に仕立てた「越前の黒龍」を出版した。
そして、歴史を主題に執筆を続ける角川さんの5作目は、大津市在住の著者ともゆかりのある北近江の戦国大名、浅井家の3代目にして最後の当主「浅井長政」にスポットをあてた。織田信長の妹、お市の方を妻とし、後に信長と決裂して織田軍との戦いに敗れ悲運の最期をとげた浅井長政は、歴史ドラマにもよく登場する人物だが、浅井家を北近江の戦国大名として成長させた経歴についてはあまり知られていない。小説は長政が元服し若くして軍を率い見事な戦い振りを披露するところから始まる。登場人物の臨場感あふれる台詞に読み手は引き込まれ、長政が信長との戦いに敗れ二十九歳の若さで自害するまで、物語は小気味よいテンポでながれ終焉へと一気に駆け抜ける。
若い頃から興味をひかれていた歴史をテーマに執筆を続ける角川さんは、いつも実際に小説の舞台を訪れることにしている。長政がお市の方と訪れたであろう、琵琶湖北東にある山本山城跡から湖面に浮かぶ竹生島を眺め、二人の会話をあれこれ想像するのも、制作の楽しみの一つとなっているようだ。角川さんの5冊目の作品を楽しみに待っている知人も多く、手書きの原稿が活字となり本として世に出ることの意義は大きい。角川さんの頭の中には、まだまだ構想が温められているそうだ。