発行日 2019年4月
著 者 木下多加子
印刷・製本 あさひ高速印刷㈱
四六判 100ページ 並製本 私家版
木下さんは友人の勧めで作風社に入会し、15年前に退会するまでに多くの短歌を詠んで来た。歌には子どもの成長や家族の情景が詠まれ、木下さんの生活風景や心のありようが透けて見える。その中から288首を選んで歌集「心のままを」にまとめ、4月に発行した。淡い桜色の表紙に薄緑の見返しが春を感じさせるとともに、木下さんの穏やかな人柄を滲ませている。初期の作品は「今にして思えば未熟な歌もあり、恥ずかしいのですが、私が生活の中で感じたままを素直に詠んでいるので、当時を思い出して懐かしくなります」と、木下さん。「短歌は俳句と違い、季語を用いないので初心者も作りやすいです」とも。
作風社では各地へも吟行し、歌会では師や仲間からの評価を受け、充実した日々だったという。短歌以外にも多彩な趣味を持ち、最近は水彩画教室に通っているそうだ。冊子の空間には歌に合わせて描いた挿絵が添えられていてほっこりとする。
母の日に娘よりもらいし三本の
ほのぼの香るオレンヂのバラ
作りたる月下美人酒水クラゲ
浮きいるようと夫は批評す
整列をなしたる如き稲の葉に
どよめきおこす風のいたづら
奥入瀬の渓谷の中進みゆく
バスも緑に染まる水無月
楊梅を口にふくめばあの夏の
思い出一つ紅くそまりぬ
出されたるスリッパ履けば足裏より
その家の温もり伝わりてくる
病みてよりただなんとなく過ぎる日々
花の季節も鈍色なるか