発 行:令和3年(2021)3月20日
著 者:住吉 満
印刷製本:あさひ高速印刷株式会社
A5判 102ページ ソフトカバー
私家版
89歳から92歳にかけて書き綴った43のエッセイと92歳の誕生日に描いた力強い作品「無題」など4つの絵画が収録された「戯れのエッセイ」を昨年3月に発行した住吉さんは、エッセイを書くことを晩年の日課としている。日々の暮らしの中で感じたことに情勢なども盛り込まれ、時には辛口の評論も交えている。92歳の昨年はコロナ禍の自粛要請で絵画教室の仲間とも会えず、会食や旅行の機会もなく、自宅で過ごすことが多くなり気持ちも塞ぎがちだったそうだ。しかし、ほぼ毎日、エッセイを書きコロナの世をどう過ごしたか、を記している。住吉さんは「毎日必死で思いを書き綴り、エッセイ『コロナ時代を生きる』を仕上げましたが、後で読み返す意欲が失せてしまっていました」と言いつつも、冊子に仕上げようと手書き原稿をプロに託した。活字になり、ゲラ校正を目にすると、記憶が甦り三日ほどで読み返すことができたという。「十一月のお月さま」の中では、コロナ禍で見た11月17日の満月に寄せて、15年前に亡き妻と見たお月さまの思い出が綴られ、「毎年、妻の写真と共にゆっくりと月を眺め、感謝する」と結ばれている。
エッセイ18編に加え、結婚三十周年記念旅行記、海外旅行記9編、そしてユニークなのが、住吉さんならではの人間考察一行メモ。人間にとって必要不可欠な事柄を十項目挙げ、一項目に十の考察を一行で表しているのだ。例えば「情熱」・情熱は若いときだけでなく生涯持つものである。「反省」・反省のない人間は唯の頑固であり進歩しない。といった風。住吉さんは独りよがりな分析、と断っているが、共感し頷くことが多い。「旅日記と雑文集」に続く三冊目へ向け、今日も原稿用紙に向かっている。