鉄斎美術館別館史料館もコロナ感染拡大防止のために休館を余儀なくされましたが、6月28日から「鉄斎の祭礼図」展が開催されています。 鉄斎は、明治維新により衰退していた神社の復興や途絶えていた京都太秦の牛祭の復興に尽力、各地の祭にも足を運び、伝統ある祭を画に遺しています。 絵手紙作家として活動している中島佐和子さんと「鉄斎の祭礼図」(前期展)を鑑賞、躍動感ある祭の楽しさに浸り、鉄斎の精神に触れました。
筆に勢いがあり、墨の色が際立つ
鉄斎美術館にはこれまで度々訪れていて、二〇一六年、兵庫県立美術館で開催された「富岡鉄斎―近代への架け橋―」展では「富士山図」を始め数々の名品を見ることができました。史料館は初めてでしたが、作品を間近に見ることができるので親しみを感じます。
今年はコロナ禍で各地の祭が中止になり淋しく思っていましたが、「鉄斎の祭礼図」展では京都を始め鉄斎が実際に足を運んだ祭の画が展示されているので作品を見ながら祭の気分を味うことができます。
若描きと言われる31歳の作品「名勝十二月図」は京都の年中行事が淡彩で軽快に描かれていて、提灯の中に落款が捺されているのも鉄斎の遊び心でしょうか。探検家で蝦夷地の研究者である松浦武四郎とも鉄斎は交流があったそうで、明治7年には北海道にも旅し、アイヌの熊祭(イオマンテ)を描いているのも興味深いです。
「文字市若布刈神事図」は海に薄い藍がかかっていて墨が一層引き立ち、闇夜が際立っています。「四祭図」屏風の左隻第一扇に描かれている京都、今宮神社のやすらい祭も今春は中止になってしまいましたが、朱を入れて華やかに描かれていて、第二扇の墨一色で描かれた滋賀、筑摩神社の鍋冠祭の対比が憎いですね。後期は右隻の八坂神社祇園祭と、鉄斎が中心になって復興したという広隆寺牛祭が展示されるので楽しみです。
私がとても気になったのは平面ケースに展示されていた「春日角伐図」。鹿の角切の様子が墨でさらっとスケッチ風に描かれているのですが、動画のような動きがあって、なんとも言えない魅力があります。絵手紙に通じるものを感じました。
私の中では文人は静のイメージでしたが、鉄斎は万巻の書に学ぶだけではなく、社会にも目を向け行動的なのに驚きました。
それは、勢いのある独特の筆遣いから生まれる墨の線にも表れているのではないのでしょうか。
【プロフィール】
中島佐和子
1946年生まれ。93年サンケイリビング絵手紙教室で絵手紙を習得、2011年〜日本絵手紙協会公認講師資格取得のため勉強、14年公認講師認定証修得。19年ギャラリーシャノワール(川西市)にて個展開催、21年教室展を予定。
「鉄斎の祭礼図」
後期 8月23日(日)~10月4日(日)
会場 鉄斎美術館別館史料館
開館時間 9時30分~16時30分
休館日 水曜・展示替期間 入館無料
※会期・開館時間は変更となる場合があります。
詳しくは美術館ホームページをご覧ください。