富岡鉄斎(1836~1924)といえば中国の古典から画題をえた仙境図などの作品で知られていますが、「万巻の書を読み万里の路を行く」ことを座右の銘に日本の各地を旅し、その土地に取材した風俗画も少なからず遺しています。また、寺社の復興に尽力した鉄斎は京都太秦の牛祭をはじめとした祭りを、生き生きと描いています。
鉄斎の若い頃は、幕末の動乱と明治維新による近代化の波が、連綿と続く日本の祭礼や習俗に多大な影響を及ぼし、寺社や伝統的な祭りも衰退の一途を辿りました。敬神崇仏の念に篤い鉄斎は独自の立場から調査研究に努め、それらの復興に尽力し、絵画にも留めています。なかでも、明治中期に京都太秦の牛祭を鉄斎が中心となって復興したことは広く知られています。京都の祇園祭、牛祭、やすらい祭、滋賀筑摩の鍋冠祭を二曲一双屏風に描いた『四祭図』には、古書画に学び、自ら調査した鉄斎の知識と経験が込められています。
また、生まれ育った京都だけでなく、『蝦夷人熊祭図』などには北海道のアイヌの儀式や祭りなど民俗学の見地からも重要な風俗が、鉄斎ならではの筆致で描かれ興味がそそられます。
鉄斎が心を寄せて描いた躍動感あふれる数々の「祭礼図」からは、鉄斎作品の中でも、特に我々が親しみを感じ取ることができるのではないでしょうか。
「鉄斎の祭礼図」
前期 6月28日(日)~8月 2日(日)
後期 8月23日(日)~10月4日(日)
会場 鉄斎美術館別館史料館
開館時間 9時30分~16時30分
休館日 水曜・展示替期間 入館無料
※会期・開館時間は変更となる場合があります。詳しくは美術館ホームページをご覧ください。