令和2年(2020)は鉄斎美術館開館45周年記念の展覧会が年4回、別館史料館で開催され、4月5日からは「鉄斎と帝室技芸員の作家たち」展を鑑賞することができます。美術家最高の栄誉である帝室技芸員に任命された富岡鉄斎と、同じく技芸員であった作家たちとの親交を示す作品・資料が展示されています。
帝室技芸員は明治23年(1890)年に帝室(皇室)による美術工芸家の保護と制作を奨励する顕彰制度として設置され、昭和22年(1947)に廃止になるまで、79名が任命されました。その趣旨は現在の文化勲章や重要無形文化財、日本芸術院会員認定に引継がれています。鉄斎は大正6年(1917)に任命されますが、「自分は画家ではなく学者である」と語っていた鉄斎にとっては思いがけない出来事でした。しかし、そのことが「近代文人画の巨匠」と評される拠りどころとなっているようです。
鉄斎と同様、帝室技芸員に任命された美術工芸家の中には日本画家である幸野楳嶺、竹内栖鳳、七宝家の並河靖之、陶芸家の諏訪蘇山がおり、鉄斎と交流が深く貴重な合作も遺しています。
中でも初代諏訪蘇山は、鉄斎が晩年に出会った芸術上の得がたき友でした。蘇山のために描かれた「蝸牛蘆図」や「帝者師太公望釣魚図」、合作になる「魁星閣図絵具皿」「高遊外詩画染付菓子鉢」などの作品からは互いの敬愛の念を感じ取ることができます。
鉄斎が創作活動を共有した美術工芸家との交流が窺える作品を楽しむことができる展示となっています。
「鉄斎と帝室技芸員の作家たち」
前期 4月 5日(日)~5月 10日(日)
後期 5月17日(日)~6月21日(火)
会場 鉄斎美術館別館史料館
開館時間 午前9時30分~午後4時30分
休館日 水曜・展示替期間 入館無料
※鉄斎美術館「聖光殿」は長期休館中。