鉄斎美術館別館史料館 ボタニカルプロデューサー・四代目又衛門さんと観る「鉄斎の花鳥画」展

鉄斎美術館別館史料館 ボタニカルプロデューサー・四代目又衛門さんと観る「鉄斎の花鳥画」展

 清荒神清澄寺の境内は背後の山から時折風が渡り、真夏でも大銀杏や楓の緑が涼しさを演出してくれます。境内にある鉄斎美術館別館史料館では「鉄斎の花鳥画」展が開催され、後期展が8月19日から始まります。園芸のまち宝塚の山本で四代続く薔薇園植物場を経営する傍ら、ボタニカルプロデューサーとして世界を舞台に活躍し、注目を集めている金岡又右衛門こと金岡信康さんと鉄斎の花鳥画(前期展示)を楽しみました。

鉄斎先生のように本質を見る力が
現代人に必要


 今の世の中は、インスタ映えとか見た目の美しさだけで判断する傾向がありますが、「鉄斎の花鳥画」展を観て、あらためてものの本質とは何か、動植物の特性やそれらにまつわる逸話などを知ることの大切さを感じました。鉄斎先生は美しさに主眼が置かれる花鳥画であっても、描くものの本質を文献や先人の画から学び研究していたことを知り、深く共感しました。
 「富貴国香図」の牡丹や「楳花山茶水僊華図」の梅、山茶花、水仙などは画に込められた意味を知ることによって見た目の美しさ以上の価値を見つけだすことが出来るように思います。
 最晩年、89歳の作で新婚を祝す意が込められたという「花鳥図」には薄い青色の花と二羽の小鳥が描かれていますが、賛には「緑の黒髪が白くなるまで夫婦仲良くする」と書かれていて、花の色が緑から白に変化する大手毬(だろうと推測します)の特徴になぞらえ、夫婦円満と長生の願いを込めていることが分かり、鉄斎先生が「単なる花鳥画ではない」といっていることが理解できるような気がしました。
 会場には書斎の写真も展示されていますが、植物分類学者の権威、牧野富太郎先生の書斎を思いだしました。足の踏み場もないほど学術書や資料が山積されている光景は同じ。鉄斎先生が学者であることを自任していたというのが分かります。まだ、牡丹栽培が盛んだったころの山本にも牧野先生は調査のためよく来られたと聞いています。
 私たち園芸業界でも、見た目だけが美しい植物、整えられた施設、公園等ランドスケープをよく見かけます。デジタル化の世の中だからこそ、自らがリアルに触れることを大切にし、本質を見ようとする習慣をつけることで、社会においても見抜く力(審美眼)を養っていかなければならないと感じました。

鉄斎美術館別館史料館 ボタニカルプロデューサー・四代目又衛門さんと観る「鉄斎の花鳥画」展

【プロフィール】
四代目金岡又右衛門(金岡信康)MATAEMON
園芸家、ボタニカルプロデューサー。1964年宝塚生まれ。1980年代から家業を担い、2006年薔薇園植物場代表取締役に就任、現在バラエングループ(5社)代表。大学・研究機関の研究員や多くのNPO法人など団体の理事、アンバサダーを務め、植物を通じた環境・教育支援で国際的に活動の場を広げる。

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