清荒神清澄寺の境内は、桜の花を愛でた春からつつじの美しい季節へと移ろい、薫風が西の谷を通り抜けます。鉄斎美術館別館史料館では今年から通年、鉄斎作品が展示されることになり、6月23日まで「鉄斎と茶の湯」展が開催されています。元宝塚歌劇団専科で活躍し、現在一人狂言を創作、舞台で演じている鈴鹿照さんと同館を訪ね、前期展示を鑑賞、鉄斎ならではの茶の湯の世界に遊びました。
狂言の肩衣に描きたくなるような
趣ある富士や面白みある狸
清荒神といえば、音楽学校の時、拝賀式で初めて袴を履いた記念にお参りに行った記憶が甦ります。鉄斎美術館には行く機会がなかったのですが、今年から鉄斎作品が同館別館「史料館」に展示されていて、お参りの際にフラッと立ち寄ることが出来るので嬉しいですね。
富岡鉄斎は煎茶にまつわる作品が多いそうですが、「鉄斎と茶の湯」展は千利休によって確立された茶の湯がテーマで、豊臣秀吉が北野天満宮で催した北野大茶会の画は、背景に金砂子が使われていて華やかです。境内には様々な茶室が設えられている中に、丿貫という茶人が大きな朱傘の下で茶を点て、客をもてなしている図が描かれていますが、野点で朱傘が用いられるようになったのはこれが元になっている、と聞きました。
また、鉄斎80歳の作品「休師訪丿貫図」は、山科にあった丿貫の庵を利休が訪ねた時に、朝おかゆを炊いた丿貫愛用の手取釜で茶を呈したという逸話に取材していて、画中に精神性までもが描かれていることに驚きました。今、言う断捨離ですね。丿貫は利休を超えるわび茶を求めた究極の茶人ということでしょうか。
「茶事秘録豊公秘話図」は、鷹狩りに出かけた秀吉が利休の娘を見かけ、その美しさに驚いて召しましたが、娘は従わなかったという秘話が描かれ興味をそそられました。
楽茶碗に鉄斎が絵付けした趣のある富士や手捻りの茶碗に絵付けした面白みのある狸は、私がライフワークにしている創作一人狂言の衣裳・肩衣に描いてみたくなりました。
そして、鉄斎さんをとても身近に感じることができました。
【プロフィール】
鈴鹿 照 SUZUKA TERU
1966年、宝塚歌劇団入団、花組から専科に移り42年間在籍し個性的な役をこなす。2007年退団後は創作一人狂言を発表、2013年「善造どんと狸汁」、17年「福商い」を宝塚文化創造館で演じるなど活躍。傍ら、笑う教室や健康体操教室など地域活動にも力を注ぐ。