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花組 一之瀬 航季

新トップスターコンビ宝塚大劇場お披露目となる花組公演は、大和和紀氏原作の少女漫画を2017年に舞台化し大好評を博した『はいからさんが通る』をパワーアップして、4月20日まで上演中。 快活な笑顔で稽古に精進する第100期生の一之瀬航季が、初めての新人公演主演、尊敬する新トップスター柚香光に少しでも近づけるようにと意気込みを語る。

新生花組公演『はいからさんが通る』の 新人公演で眉目秀麗な陸軍少尉を演じる

 新トップスター柚香光とトップ娘役・華優希が率いる新生花組披露公演は、大和和紀氏原作のミュージカル浪漫『はいからさんが通る』。1975年から77年にかけて「週刊少女フレンド」に連載された、この傑作少女漫画は大正浪漫華やかなりし東京が舞台だ。柚香光演じるハンサムで笑い上戸の陸軍少尉・伊集院忍と、はいからさんと呼ばれる快活なじゃじゃ馬娘・花村紅緒が繰り広げる波瀾万丈のラブストーリーである。2017年にシアター・ドラマシティと日本青年館において、花組の柚香光と華優希を中心に上演され、再演が待ち望まれていた。1970年代後半の雑誌連載から、その後のテレビアニメ、実写映画、ドラマ、劇場版アニメーションなどを経て、待望の宝塚歌劇化という、長年に亘り世代を超えて愛され続ける稀有な作品だ。新トップコンビのお披露公演にふさわしく、新生花組の魅力あふれるフィナーレナンバーが加わり、よりドラマティックに鮮烈にパワーアップした舞台が眩しい。
 晴れやかなお披露目公演の新人公演で、主役の伊集院忍を演じるのが、100期生の一之瀬航季さん。「いつか新人公演の主役をさせていただきたいという思いをずっと抱いてきましたので、お聞きした瞬間は本当にうれしくて。応援してくださっている方々にご報告すると、温かい言葉をたくさんいただいて、こんなに幸せなことってあるんだなと胸がいっぱいになりました」
 同期生が活躍する中、次は自分もと逸る気持ちをできるだけ抑えていたという一之瀬航季さん。「お稽古場では絶対に辛さや悔しさを見せないと自分に誓っています。負の感情を持ってはいけない、時間の無駄だと教わりました。人と対立すると掴めないものがあるような気がします。どんなに時間がなくても劇団レッスンに出るよう心掛けています。出ると必ず同期がいる。意識の高い同期たちに恵まれているのは幸せです」
 2017年版『はいからさんが通る』を客席で見ていた一之瀬航季さんは、「登場人物がそれぞれに誰かを想っている温かくて素敵な作品です。とにかく伊集院忍を演じていらっしゃる柚香光さんがカッコよくて、見入ってしまいました。新生花組披露公演のお稽古が始まって、柚香さんはご自分のことだけでも大変なはずなのに、私ができないところを細かく見てくださいます。私も次のお稽古までには必ずできるようになるぞという気合でがんばっていますが、柚香さんは多くの下級生達にもそれぞれ細かく教えてくださって…。どんなにお忙しくても、妥協せず実践して見せてくださる、本当に素敵な方です。少しでも近づけるように精一杯努力して、それにプラス、自分らしさが出せればいいなと思っています」
 一之瀬航季さんにとって、この1年間の経験は濃密だったようだ。「すべての役が愛おしく、毎回、今が転機と思えるほど印象深い舞台を経験できて、私自身が目指したいと思う男役のビジョンがはっきり見えてきました。大人の男性がもつ男らしさに、宝塚歌劇独特の華やかさと王道の艶やかさを合わせ持った、宝塚でしかできない男役を目指したいと思います」
 一之瀬航季さんの今後の目標は「強い宝塚愛と共にこだわりをもって役をつくり込んでいき、こんな役をさせたい、こんな姿を見たいと常に思っていただける男役になれるよう精進してまいります。お客様や応援してくださる方々の愛に舞台でお返しできる舞台人になれるように、ひたすら励むつもりです」
 芸名に込めたのは、果てしない海を航海するように…無限の空を飛行するように、広く高いところを目指していくぞ、という決意。荒っぽいのは嫌いだそうだが、男っぽさで視線を釘付けにする。ハートに沁み入る声と言葉の数々が、男役・一之瀬航季さんの魅力を織り上げていく。

一之瀬 航季さん

2014年『宝塚をどり』で初舞台、花組に配属。20年『はいからさんが通る』で新人公演初主演。
出身/千葉県  愛称・はなこ

インタビュアー 名取千里(なとりちさと)
(株)ティーオーエー代表取締役、現代文化研究会事務局/主な編著書「タカラヅカ・フェニックス」(あさひ高速印刷)「タカラヅカという夢1914~2014」(青弓社)「タカラヅカ・ベルエポックI・II」(神戸新聞総合出版センター)/「仕事も結婚も」 (恒友出版)
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