トップページ > 2013年08月号 >フェアリーインタビュー

月組 星条 海斗

8月12日まで上演中の月組宝塚大劇場公演は、2012年に発見され話題となっている「ルパン、最後の恋」をいち早くミュージカル化した『ルパン―ARSÈNE LUPIN―』と、「躍動」をテーマに、月組のフレッシュな魅力を歌、そしてダンスで綴るグランド・レビュー『Fantastic Energy!』の2本立て。 舞台映えする華やかな容姿とスタイルの月組男役スター・星条海斗、人物像が滲み出るような芝居で観客を魅了する。

ルパンを執拗に追う警部をコミカルな味で魅せる

 7月12日、月組宝塚大劇場公演『ルパン―ARSÈNE LUPIN―』『Fantastic Energy!』の初日の幕が開けた。ミュージカル『ルパン―ARSÈNE LUPIN―』は、2012年に発見されたばかりのモーリス・ルブラン作「ルパン、最後の恋」が原作だ。脚本・演出は座付作者の正塚晴彦氏。物語は、死んだはずのアルセーヌ・ラウール・ルパンから挑戦状が届き、ジュスタン・ガニマール警部が精気を取り戻すところから始まる。

 「ガニマール警部にとって、怪盗紳士ルパンは特別な存在です。ルパンのことは自分が1番分かっていると信じているガニマール警部は、ルパンを追い続けることが生き甲斐なのです」

 そのガニマール警部に扮しているのが、このところ、特に進境著しい星条海斗さんだ。2000年に初舞台を踏んだ第86期生であり、月組に配属されてから今日まで月組一筋に活躍中の、それはハンサムな男役スターである。

 「宿敵なのに深い縁があるルパンへのガニマールの思いは、恋に似ていると思います。ガニマールはルパンが大嫌いなのに大好きで、軽蔑しつつも尊敬している。ルパンに魅了されているため、ずっと追い続けていたいのです。捕らえてしまうと、生き甲斐を失ってしまうから。そんなガニマール警部は正義感にあふれ、野心もあり、人間っぽい味のある人物です。最後にガニマールが本当にルパンを捕まえるかどうかに注目していただければうれしいです。ガニマールがどんな理由で、どのような決断をするのか、ぜひお楽しみください」

 173センチの長身、スタイリッシュな容姿で舞台映えする星条海斗さんは、動きもストイックなほど無駄がなくて美しい。ハートも熱く、姿なき強敵との死闘が繰り広げられる中で、コミカルな役どころのガニマール警部を愛しさいっぱいに演じている。

 振り返れば、新生月組のお披露目公演『ロミオとジュリエット』、そして立ち見が出るほどの感動を生み出した『ベルサイユのばら―オスカルとアンドレ編―』の2公演は再演物。再演物を演じるむずかしさは、良くも悪くも公演の数だけイメージができ上がってしまっていること。でも3公演目となる『ルパン―ARSÈNE LUPIN―』は新作。個性豊かな月組生全員がゼロから創り上げた。それゆえに観客は、初対面の人に会いに行くときのようなトキメキを抑えることができない。

 「,12年の全国ツアー公演『愛するには短すぎる』の船長ウェンズワース役では、まだ自分の殻が破れなくて、正塚先生に『もっと五感を使って、もっとリアルに』とご指導頂きましたが、今回は先生の求めるニュアンスを掴みかけている気がします。役からこぼれてくるように台詞を言うのはむずかしいけれど、人物像が滲み出て空間を埋めていく芝居をしたい。今、演じることがとても楽しいです」

 あとにも先にもあんなにリアルな台詞は聞いたことがなかった。『ベルサイユのばら―オスカルとアンドレ編―』で星条海斗さんが演じたアランの短い台詞の中には、妹思いの兄の壮絶な半生が塗りこめられていた。「ファンの方がもっていらっしゃるアラン像を体現したいと思い、でき上がっているイメージに飛び込む気持ちで取り組みました。最終的にはアランの感情がわき上がってきて、公演中、朝から晩までアランとして生きていたので、終演後はどこにも行けない程、毎日疲れ切っていました。その前の『ロミオとジュリエット』でロミオの親友ベンヴォーリオを演じた時にも、星条海斗ではなくベンヴォーリオとして生きている感覚になることがあったのですが、それがアランにつながったのだと思います」

 毎公演、新しい魅力を堪能させてくれる星条海斗さんが久々に、たっぷりと歌い踊るグランド・レビュー『Fantastic Energy!』も、本当に楽しみである。

星条 海斗さん

2000年『源氏物語あさきめゆみし』で初舞台、月組に配属。06年『暁のローマ』で新人公演初主演。12年『ロミオとジュリエット』でベンヴォーリオ、13年『ベルサイユのばら』でアランを熱演、好評を得る。
出身/神奈川県 愛称・マギー

インタビュアー 名取千里(なとりちさと)
ティーオーエー、現代文化研究会事務局/宝NPOセンター理事主な編著書「タカラヅカ・フェニックス」(あさひ高速印刷)「タカラヅカ・ベルエポックI・II」(神戸新聞総合出版センター)/「仕事も結婚も」 (恒友出版)
宝塚の情報誌ウィズたからづか

ウィズたからづかの最新コンテンツ