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月組 紫門 ゆりや

8月29日まで上演中の宝塚大劇場月組公演は、野望に燃える若者のドラマティックな生き様を描いた秀作『アルジェの男』と、様々なダンス・スタイルで構成した躍動感溢れるショー・スペクタクル『Dance Romanesque』。 ダンスが得意な若手スター・紫門ゆりや、新人公演では暗い過去を持ち野心を抱いて生きるジュリアンを演じ、男役の幅を広げる。

「アルジェの男」の新人公演で   骨太で男くさい一面を魅せる

 8月16日、午後6時。紫門ゆりやさんが主演する新人公演『アルジェの男』の幕が上がる。2005年『エンター・ザ・レビュー』で初舞台を踏んだ紫門ゆりやさんにとって最後の新人公演だ。研5の2009年5月『エリザベート』新人公演で霧矢大夢が演じるフランツ・ヨーゼフ役に抜擢されて以来、2010年4月『THE SCARLET PIMPERNEL』新人公演のショーヴラン、同年9月『ジプシー男爵』新人公演のオトカー、2011年3月『バラの国の王子』新人公演の王様など、主要な役どころを演じてきた紫門ゆりやさんだが、初の主演は予想がつかない緊張感があると言う。

 「これまでの新人公演では色濃い役を頂くことが多かったので、その経験を今回のジュリアンに生かせればと思います」

 『アルジェの男』のジュリアンは一体、どんな人物なのか。彼は今でこそ有能な秘書官であり社交界の星とも呼ばれているが、スラム街に育った孤児という過去があり、出世のために自らの野心を解き放って生きている男である。

 「お芝居の前半で、パリで一旗揚げることを夢見ながら悪事を働く、下町のやさぐれた若者のジュリアンを演じます。私自身、骨太な面や男くささがもっと前面に出てくれば男役としての幅が広がる、とたびたび言われてきていて、ジュリアンはまさにそれが必要な役。苦手意識のあった歌も、最近は歌うことがすごく楽しくなっているので、楽譜に忠実に歌うだけではなく芝居の要素や役の個性をメロディにのせて歌えるよう、挑戦したいと思います」

 『アルジェの男』は1974年8月に宝塚大劇場で初演され、1983年11月に東京宝塚劇場で再演された柴田侑宏氏のオリジナル作品。今回の演出は大野拓史氏。新曲が増え、台詞にも多少、変更部分があるものの、大筋において峰さを理が主演した再演に忠実だ。

 「音楽学校時代の演劇発表会で『アルジェの男』のジュリアンを演じたことがあり、この度ジュリアン役を頂いたことに、不思議な縁を感じています。わずか15分ほどの、衣装も舞台化粧も無い舞台でしたが、それを機に宝塚と男役の芝居がすごく好きになり、演じることにさらに興味をもちました。それだけに、固定した先入観にとらわれずに演じたいと思っています。台本を一から読み直し、本役の霧矢大夢さんのジュリアンをしっかり見て、研究したいです」

 野望に燃えるジュリアンが、サビ―ヌの無償の愛に心を打たれ、「自分は何を求めて生きてきたのか…」と急に虚しさを覚えて立ち竦む。後半の山場だ。一方、紫門ゆりやさんが本公演で演じるのはパリの上流階級に生まれた、秘書官仲間のルイ。生まれも育ちも大きく異なる人物を演じわける紫門ゆりやさん。同時上演のショー『Dance Romanesque』ではダンスが得意な紫門ゆりやさんの魅力が弾ける。

 そして新人公演当日。本公演のフィナーレのあと、緞帳が下りると、紫門ゆりやさんはルイの化粧を落とし、ジュリアンの顔をつくり始める。新人公演開演5分前、紫門さんは、緊張で高鳴る胸をしずませながら舞台に立つ。「落ち着きがない状態で舞台に出ると、思ったことの何分の一もお客様に伝えられないので、適度にハイの状態を保ちつつ、自分を落ち着かせたいです」
 紫門ゆりやさんは2番で入団した91期の優等生。新人公演を卒業すると、いよいよ本公演での活躍が待っている。

紫門 ゆりやさん

2005年『エンター・ザ・レビュー』で初舞台、月組に配属。11年『アルジェの男』新人公演で初主演。
愛知県出身/愛称・しもん、ゆり

インタビュアー 名取千里(なとりちさと)
ティーオーエー、現代文化研究会事務局/宝NPOセンター理事主な編著書「タカラヅカ・フェニックス」(あさひ高速印刷)「タカラヅカ・ベルエポックI・II」(神戸新聞総合出版センター)/「仕事も結婚も」 (恒友出版)
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