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花組 朝夏 まなと

7月4日から20日まで上演中の花組・梅田芸術劇場公演は、1930年代のロンドンを舞台に、下町に住む若者が紆余曲折の末に伯爵家に跡継ぎとして迎えられるという、明るくロマンチックなミュージカル『ME AND MY GIRL』。 スケールの大きな演技で注目を浴びる朝夏まなとが、ジャッキーとジェラルドの役替わりに挑戦、また新しい魅力を発揮している。

公演中、日々進化するジャッキーに注目

 「ショーの1場面で女役に扮したことはありますが、お芝居では初めてなんです。声の出し方も仕草も、新しい引き出しが必要でした」と、花組の男役・朝夏まなとさん。梅田芸術劇場メインホールで7月4日から20日まで上演中の花組公演『ME AND MY GIRL』で、公爵夫人の娘ジャクリーンを演じている。

 「ジャクリーンは、行方不明になっていたヘアフォード伯爵家の世継ぎビルが見つかると、婚約者のジェラルドに婚約指輪を返して、ビルを誘惑します。したたかで嫌な女と思われそうですが、ジャッキーは自分の気持ちを隠さずに一生懸命にビルを自分のものにしようと、うまくいかなくても諦めず、とことんプラス思考で突っ走る女の子。素直で夢見がちな、かわいい人だと感じています」

 身長172センチの朝夏まなとさんが、抜群に長い美脚を生かし、ブルーのガウン姿で「あなたは私に夢を見させる(YOU WOULD IF YOU COULD)と歌いながらビルの気を引く「応接間」の場面は、大きな見所の一つだ。

 『ME AND MY GIRL』は1937年にロンドンで初演された、男性版「マイ・フェア・レディ」ともいえるラブ・コメディ。86年にはブロードウェイでも上演され、これまでに1646回のロングラン記録をもつ。87年の宝塚歌劇版が日本初演。月組が演じ、95年の再演、96年の中日劇場公演、2008年の再々演と博多座公演もすべて月組。今回、初めて花組にバトンタッチされ、ビル真飛聖、サリー桜乃彩音の息の合った美しいトップコンビによるロマンチックな純愛物語が繰り広げられている。

 「長い間、多くの人たちに愛されている作品なので、物語に関わる役をさせていただける幸せを噛み締めています。今回、役替わりで演じているジェラルドも少しの翳りもない好青年。これまで演じてきた二枚目とはまた違うカラーなので、新鮮で楽しいです」

 幕開け、パーティが催されているヘアフォード伯爵邸ではジェラルドだけが2階にいて、♪ニュースだ、弁護士が世継ぎを見つけたぞ、僕は見たぞ、もうすぐ来る♪と歌い出す。

 「舞台上の紳士・淑女たち、そして御客様の視線が一斉に自分に集まるので、それを跳ね返すくらいの強いパワーがいります。入団8年目に、また新しい朝夏まなとを見ていただけるようにジャッキーでは女らしさを磨き、ジェラルドでは貴族のおぼっちゃんという新しいカラーを出して、がんばっていますので、是非、何度でも劇場にお運びいただければうれしいです」

 朝夏まなとさんの初舞台は2002年。これまで4作の新人公演に主演した期待の実力派だ。生粋の大らかでのびやかな芸風に多くの人が引き寄せられる。最後の新人公演『太王四神記』では魔術を使う悪役・大長老プルキルを堂々と演じ、存在感を際立たせた。
「役作りに制約がなく、思うままに演じることができて面白かった」と、晴れ晴れとした表情が印象的だ。打てば響く、知的な語り口が梅雨空を吹き飛ばすようにさわやか。

 1作ごとに驚異的な進化を遂げている朝夏まなとさんのこと、初日のジャッキー、ジェラルドを演じたあとのジャッキー、そして千秋楽のジェラルドを見比べる楽しみも与えてくれるはず。
「1日ごとに私自身、役の人物としての感じ方が深まってくると思います。成長を見守っていただきたいですね」

 梅田芸術劇場メインホールだけの、2週間あまりの公演。女役と男役を行き来する朝夏まなとさんの魅力を堪能したい。

朝夏 まなとさん

2002年『プラハの春』で初舞台、花組に配属。05年、『マラケシュ・紅の墓標』で新人公演初主演。08年バウ・ワークショップ公演『蒼いくちづけ』でバウ初主演。
佐賀県出身/愛称・まぁ、まなと

インタビュアー 名取千里(なとりちさと)
ティーオーエー、現代文化研究会事務局/宝NPOセンター理事主な編著書「タカラヅカ・フェニックス」(あさひ高速印刷)「タカラヅカ・ベルエポックI・II」(神戸新聞総合出版センター)/「仕事も結婚も」 (恒友出版)
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