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花組 望海 風斗

7月30日まで上演中、花組・宝塚大劇場公演は、オードリー・ヘップバーン主演のヒット映画作品からミュージカル『麗しのサブリナ』と、現代的でエネルギッシュなスパークリング・ショー『EXCITER!!』の2本立て。 豊かな歌唱力と瑞々しい演技で定評のある望海風斗、広い視野をもって大きく成長し、真夏の舞台を熱く盛り上げる。

娘役を経験し、男役としての幅を拡げる

『麗しのサブリナ』と言えば、56年前のオードリー・ヘップバーン主演映画が有名。ヘップバーンが身に着けていた細身のパンツがサブリナパンツとして大流行、今夏、宝塚歌劇団花組によりオシャレでロマンチックなミュージカルとして蘇った。宝塚大劇場で8月30日まで、東京宝塚劇場で9月17日から1ヵ月間上演される。

 富豪の実業家ライナス・ララビーと、弟のデイヴィッド、そしてララビー家の運転手の娘サブリナが繰り広げる粋なラブ・ストーリーだ。
 「お稽古はまず、裕福な家庭で育ったプレイボーイってどんな感じなのかなと想像することから始まりました」と、デイヴィッドの友人フランクを演じている望海風斗さん。
 「フランクはデイヴィッドの友人4人組の一人です。デイヴィッド同様、みんなプレイボーイ。パーティを賑わしたり、銀橋に出て歌ったり踊ったり、堅苦しくない場面を担当して楽しんでいますが、前作『虞美人』で私は娘役をさせていただいたので、スーツ物の男役はどうやって動いていたっけ、とお稽古中に考え込んでしまうこともありましたね」

 稽古期間を含めて約4ヵ月間、娘役に没頭した結果である。改めて言うまでもないが宝塚歌劇では男役は男性の役を、娘役は女性の役を演じ続ける。しかし、たまに男役が女性の役を演じることもあり、『虞美人』の桃娘役に男役スターの望海風斗さんが抜擢されたのだった。桃娘は項羽に父を殺害されたあと、劉邦側のスパイとして少年になりすまし項羽の寵姫である虞美人に仕える。殺陣もあり、男役として培ってきたものが役立ったが、なにしろ紀元前3世紀の史実を脚色したファンタジーだ。運命に翻弄される娘を演じるのはむずかしかったと言う。「音楽学校時代から男役ばかり9年間、勉強してきましたから、女性の仕草やセリフの言い方、動き方などに加え、女性特有の心をもつのが大変でした」

 苦労して取り組んだだけに、掴んだものは大きい。
「娘役を経験して、男役とは違う視点で物事を見ることができました。これからは、もっと自分を解き放ち、広い視野をもって、さまざまなことを吸収したいと思います」


 音楽学校時代は委員を務め、2003年に2番の成績で入団した優等生だ。研6で大作『太王四神記―チュシンの星のもとに』新人公演の主役タムドクに抜擢されたときも、
「新人公演主演は憧れであり目標だったので、すごくうれしかった」と迷いなく受け止めた。瑞々しい演技と歌唱力で若き王の苦難と愛を演じ切った望海風斗さんは、『外伝 ベルサイユのばらーアンドレ編』新人公演でも主演し、舞台の中央、ゼロ番に立つ貴重な経験を積んだ。

 中堅と呼ばれる学年になった望海風斗さんに期待がかかる今夏の花組公演は『麗しのサブリナ』とショー『EXCITER!!』との2本立てだ。トップ真飛聖が新しい相手役・蘭乃はなを迎えて初の本公演である。『EXCITER!!』は1年前の初演とほぼ同じ構成だが、「進化した姿をお見せしたい。ロケットボーイを是非、観てください」と熱く語る。


 舞台の上は発見の連続だ。どれだけ稽古しても、いざ化粧を施し、衣装を着け、舞台セットの中に立つと、役の大きさや責任の重さが全身を貫くと言う。
 「舞台の上で生まれ続けるものがあります。新たな発見が自分の芝居を少しずつ変えていく。いつか、もっと周りを見ることができる、大きな役者になりたい」

 スター揃いの花組で、まちがいなく宝塚歌劇100周年の戦力になる存在である。

望海 風斗さん

2003年『花の宝塚風土記』で初舞台、花組に配属。09年『太王四神記』で新人公演初主演。10年『虞美人』では初の女役である桃娘に抜擢。
神奈川県出身/愛称・だいもん、ふうと

インタビュアー 名取千里(なとりちさと)
ティーオーエー、現代文化研究会事務局/宝NPOセンター理事主な編著書「タカラヅカ・フェニックス」(あさひ高速印刷)「タカラヅカ・ベルエポックI・II」(神戸新聞総合出版センター)/「仕事も結婚も」 (恒友出版)
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