トップページ > 2009年01月号 >フェアリーインタビュー

花組 愛音 羽麗

2009年新春を飾る宝塚大劇場花組公演は1月1日から2月2日まで、ペ・ヨンジュン主演で話題の韓国歴史ファンタジードラマをミュージカル化した、幻想歌舞劇『太王四神記』-チュシンの星のもとに-。 華やかな美形男役として注目を集める愛音羽麗、幅広い演技で舞台を盛り上げ、宝塚歌劇95周年の幕開きを華やかに彩る。

広い芸域を持つ美しい男役

花組の愛音羽麗さんは、とりわけ美しい男役だ。

 その上、お会いした最初の一言で、まるで以前からの知己であるかのような錯覚を抱かせるトークの達人でもある。といっても、単に話術がうまいという平凡な話ではない。愛音羽麗さんがトークの達人である最大の点は、ご自身がごく自然体で相手の構えた気持ちをあっという間に取り払ってしまうかのようになごませてくれること。

 そんなナチュラル系の愛音羽麗さんが一旦、舞台に立つと、タカラヅカの凛々しい男役の芸を様々に堪能させてくれる。

 記憶に新しいのが2007年6月、宝塚バウホールで単独初主演を果たした『舞姫』の太田豊太郎役だ。白い軍服姿で颯爽と登場した愛音羽麗さん。初日が開くと評判が評判を呼び、東京での再演も実現して、『舞姫』は愛音羽麗さんの代表作となった。

 「作品にも音楽にもメンバーにも恵まれて、今振り返ってもすごく幸せだったなと思います。期間を置いての再演はなかなかさせていただけないのに、9ヵ月後に東上が叶い、その間に経験を積んで改めて稽古に取組めた結果、芝居の深い部分を掘り起こすことができました。煮詰める時間の大事さを知り、ありがたい機会をいただいたと感謝しています」

 宝塚バウホール公演『舞姫』が2008年3月に東上するまでの間、愛音羽麗さんは07年9月、宝塚大劇場公演『アデュー・マルセイユ』で、本役初の女役ジャンヌを演じた。ミュージックホールのスターであり、夜の街を支配するシモンという恋人がいる大人の女性だ。

「男役のナンバーに出られないので、いいなあ、踊りたいなあと、もどかしい思いもありましたが、女役をさせていただいたことで男役を客観的に見ることができ、やっぱり素敵だなあとファンだった頃の気持ちが蘇ってきました」

 男役として新たな一歩を踏み出した愛音羽麗さんは2008年5月、宝塚大劇場公演『愛と死のアラビア』で軍医ドナルド、『Red Hot Sea』で海の妖精シェルに扮し、9月、全国ツアー『外伝 ベルサイユのばら―アラン編―』で、ついに憧れのオスカル役を射止めた。

「花組の『ベルサイユのばら』を観て宝塚受験を決意したので、『ベルばら』に出演できオスカルをさせていただけたことは、ものすごく幸せ。漫画本も全巻買っていたので読み返し、自分は本当に宝塚が好きだったんだと再認識しました。『ベルばら』は自分の感情だけでは演じきれない作品で、最初はどう動けばいいのかわかりませんでした。見せ方にきまりがあり、なるほど、これがオスカルかと、一つ一つが勉強になりました」

 オスカルを演じるという夢の一部は叶ったものの、オスカル編の名曲「わが名はオスカル」やアンドレとの愛のシーンはないアラン編でのこと。多くのファンにとって、夢の続きに強く期待せずにはいられないものがある。

「自分でも一区切りついたという気持ちは全くなく、ディナーショーでも『ベルばら』の名曲をいくつか歌わせていただきました」

 愛音羽麗さん初のディナーショー「PRISM プリズム」が宝塚ホテルと第一ホテル東京で開催されたのは11月初旬のこと。もちろん『舞姫』の名曲は、舞姫コーナーで存分に歌い、ファンを魅了した。

「タイトルのプリズムは、光を当てるといろんな色に輝きます。男役・愛音羽麗のいろんな姿を見ていただきたいと」

 そのディナーショー稽古中の10月26日、愛音羽麗さんは財団法人・阪急学園 池田文庫で演出家・植田景子氏と対談した。今年は宝塚バウホール30周年。テーマ「宝塚バウホールと私」に抽選で集まった人たちが熱心に聞き入った。

「ふだんは演出家の先生方と、ゆっくりお話する機会がなく、貴重な体験をさせていただきました。男役での初台詞はバウ公演では『ロミオとジュリエット'99』、大劇場公演では『ルートヴィヒⅡ世』。なんと、どちらも植田景子先生の作品なんですよ。バウ単独初主役をいただいた『舞姫』も植田景子先生の脚本・演出ですから、すごくご縁がありますね、という話で盛り上がりました。男性のお客様も大勢いらしていて、新鮮で楽しいひとときでした」

 いよいよ宝塚歌劇95周年の幕開けである。2009年1月1日、愛音羽麗さんが出演する花組宝塚大劇場公演『太王四神記』が初日を迎える。韓国の同名人気ドラマを小池修一郎氏が宝塚歌劇独自の演出で魅せる、スケールの大きな一本立て大作だ。現在、稽古、真っ最中!

「再び、女役です。といっても少年のような。与えていただくいろんな役にチャレンジし、全力で応えていくことが次につながると思っています。いただいてきた役が自分をつくってくれた部分がすごくあり、心の軌跡を演じることが楽しくてしかたがありません」

 男役・愛音羽麗さんの包容力ある美しさは、見る人の心を癒す。

 あの、女性も惚れた素敵なジャンヌ役が小池修一郎作品だったことを思うと、今回も愛音羽麗さんがどのような魅力を堪能させてくれるのか、開演が待ち遠しい。

愛音 羽麗さん

1997年『仮面のロマネスク』で初舞台、花組に配属。2003年バウ・ワークショップ『おーい春風さん』でバウ初主演、同年『野風の笛』で新人公演初主演。07年バウ・ホール公演『舞姫-MAIHIME-』でバウ単独初主演、好評を博し08年日本青年館公演にて続演。
大阪府出身/愛称・みわっち、みわ

インタビュアー 名取千里(なとりちさと)
ティーオーエー、現代文化研究会事務局/宝NPOセンター理事主な編著書「タカラヅカ・フェニックス」(あさひ高速印刷)「タカラヅカ・ベルエポックI・II」(神戸新聞総合出版センター)/「仕事も結婚も」 (恒友出版)
宝塚の情報誌ウィズたからづか

ウィズたからづかの最新コンテンツ