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宙組 大和 悠河

6月22日から7月30日まで上演中の宝塚大劇場宙組公演は、19世紀初頭のスペインを舞台にしたミュージカル・ロマン『バレンシアの熱い花』と、宙組誕生10周年を祝って「宙」をテーマにしたショー、コズミック・フェスティバル『宙FANTASISTA!』の2本立て。天性の華やかさで早くから注目を集めていた大和悠河、大劇場お披露目公演の幕が上る!

宙組誕生10周年。新トップの美しい魅力で新たなスタートを

「新しくなった宙組を観ていただきたい。早くお客様にお会いしたい気持ちでいっぱいです」

宙組発足から10周年の今年、宙組4代目の新トップに大和悠河さんが就任した。

宝塚音楽学校時代から、まるで宝塚歌劇のために生まれてきたような人、と言われ続けてきた大和悠河さん。音楽学校の卒業文化祭で主演し、初舞台後は新人公演に6回主演。宝塚バウホール公演にも6回主演している。先輩たちを追う立場の若手時代を、追われる立場ですごし、新人公演卒業後第1作目の宝塚大劇場公演『ガイズ&ドールズ』でいきなり準主役のネイサンを演じた。抜擢続きで追われっぱなしの12年間を、勢いよく駆け抜けて、期待いっぱい、大きな主演スターの座に就いた。

「宙組は4組から集まってできた組。ひとつにまとまっていくためにみんなで力を合わせてやってきたと思うので、新たなスタートをきっかけにさらに飛躍したいと思います」

大和悠河さんは2003年に月組から宙組に移ってきた。だが、すぐに宙組公演に出演したわけではなく、星組による日生劇場公演『雨に唄えば』にコズモ役で特別出演し、宙組公演には博多座の『鳳凰伝』『ザ・ショー・ストッパー』からである。

「組替え自体は自分にもいつかはあるかなと、心構えはできていました。月組のほかに星組も宙組も経験でき、結果として、いい意味で物事を大きな視野で見れるようになり、宝塚は一つだなと実感できたことはよかったです。どの組のどの作品に出演しても、この役は大和悠河が演じたからこういう風になったと個性を感じていただけるように、これからもやっていきたいと思っています」

移籍後に初めて宙組全員が揃った宝塚大劇場公演『白昼の稲妻』『テンプテーション!』の客席には、いつもとちがう熱気があった。

「月組時代から応援してくださる方たちが観ていらっしゃる中、尊敬する上級生の中で、しっかり演じなければと。今、思い出そうとしてもあまり記憶に残っていないほど、緊張していたのがなつかしいです。反面、新しい環境を得て、もう一度初舞台生に戻ったような気分になり、一から自由に演じられたのは楽しかったですね」

サバティエ役で見せた陰のある色気は、渾身で取り組んで演技の巾を広げた大和悠河さんの香気である。ショーで初めて女役を披露したのも、このときだ。あまりに魅力的で評判がよかったため、「女役はたまにやるからいいんです」と、男役専念宣言まで飛び出した。

翌2004年は宝塚歌劇90周年の年。宝塚は一つ、のテーマのもと、スターの特別出演が続き、大和悠河さんは星組宝塚大劇場公演『1914/愛』『タカラヅカ絢爛』と、星組博多座公演『花舞う長安』『ロマンチカ宝塚'04』に特出した。

03年の星組日生劇場公演『雨に唄えば』も含めて、大和悠河さんが特出した星組公演には、このたび相手役に抜擢された陽月華も出演していた。
「稽古場は同じでしたが、芝居や踊りでガッチリ組んだことはなかったです。ふだんの陽月はシャイなのに、舞台の上では次々といろんな表情が出てくる。すごく斬新な面をもっているから、これから何が飛び出すか、楽しみです」

スコット・フィッツジェラルドの半生を出ずっぱりで演じた宝塚バウホール主演公演『THE LAST PARTY』が04年10月。その成果をもって05年1月、宙組宝塚大劇場公演『ホテルステラマリス』『レヴュー伝説』に臨み、その全国ツアー公演から宙組の準主役スターに。同年8月、宝塚大劇場公演『炎にくちづけを』『ネオ・ヴォヤージュ』に出演し、06年3月『NEVER SAY GOODBYE』で宙組2代目トップを見送ると、8月の博多座公演『コパカバーナ』のリコ役で3代目トップと組み、11月の宝塚大劇場公演『維新回天・竜馬伝!』『ザ・クラシック』で3代目トップを送り出す大役を果たした。

07年3月、シアター・ドラマシティ公演『A/L-怪盗ルパンの青春-』が、宙組4代目トップ大和悠河さんの新スタートである。子どもの頃からルパンが大好きだった大和悠河さんにとって、宝塚版ルパンは分身のように愛しい役だったにちがいない。

「思い返すと06年は役柄的にもいろんなものを吸収できた年でした。久々の日本物で竜馬の親友・中岡慎太郎を演じ、やはり自分は日本人だな、気持ちがストレートにわかるなと思えた反面、幕末に生きた青年の、日本の未来を考える熱さなどを演じるに当たっては、嘘にならないように、リアルさを出すむずかしさを感じました。

もともと私は宝塚に入る前から負けず嫌い。宝塚の生徒はみんなそうだと思うのですが、こんなことでは負けないぞと、グッとがんばって、悩む時間があればお稽古する。自分の甘い部分と戦わないと、前には進めません。この役を大和悠河はどう演じるだろうという皆さんの期待を感じつつ、今の自分にしかできないものを観ていただこうという思い、そしてもっとできるようになりたいという願いを持ち続けてきました。そういった意味でも本当に恵まれてきたこと、温かい環境の中で宝塚生活を楽しくすごさせていただいていることをありがたいなと感謝しています」

2001年に第18回浅草芸能大賞新人賞を、大賞の市川猿之助氏ほかの人たちと受賞しており、東京での活躍ぶりと実績が評価されている。

さて、いよいよ新生宙組宝塚大劇場披露公演『バレンシアの熱い花』『宙FANTASISTA!』が6月22日に幕を上げる。

「お芝居は1976年に月組で上演され大好評だった作品の、初めての再演です。19世紀にスペインのバレンシアで起きた父親殺しの復讐と悲恋を描いた物語で、スペイン版ハムレットみたいな感じでしょうか。復讐を決意したフェルナンドが真の思いを隠して人前で演じ続けるのですが、大和悠河の演技とフェルナンドの演技という二重のおもしろさを楽しんでいただければうれしいです。ショーは宙組誕生10周年がテーマ。宇宙に生まれた王子が、宇宙一周の旅に出かけ、そこで出会うさまざまな出来事を歌とダンスで綴っていきます。登場するのはすべて宇宙人。お芝居とはガラッと雰囲気を変え、宙組の新たな魅力を感じて頂けるようなドラマチックなショーを全員で目指しますので、ご期待ください」

これからの抱負をお聞きすると、
「自分の中で男役の美学をどんどん新しく生み続けることができたら、しあわせだなと思います」
 それなら宝塚歌劇の演目も多彩に広がりそうだ。宝塚歌劇100周年への牽引役、貴重な切り札である。

大和 悠河さん

やまとゆうが・1995年『国境のない地図』で初舞台、月組に配属。97年『ELDORADO』で新人公演初主演。98年『シンデレラ・ロック』でバウホール公演単独初主演。2003年宙組に組替え。07年シアター・ドラマシティ公演『A/L-怪盗ルパンの青春-』より宙組主演男役に。
東京都出身/愛称・ゆうが

インタビュアー 名取千里(なとりちさと)
ティーオーエー、現代文化研究会事務局/宝NPOセンター理事主な編著書「タカラヅカ・フェニックス」(あさひ高速印刷)「タカラヅカ・ベルエポックI・II」(神戸新聞総合出版センター)/「仕事も結婚も」 (恒友出版)
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