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花組 朝夏 まなと

2月2日まで上演中の宝塚大劇場花組公演は、韓国ドラマ「太王四神記」を、舞台ならではの演出を凝らし、宝塚歌劇らしい華やかさを盛り込んだ、幻想歌舞劇『太王四神記』-チュシンの星のもとに-。 ゆったり観劇できるようリニューアルされた宝塚大劇場の95周年幕開けの舞台で、美しい立姿に輝く瞳が魅力の花組若手スター朝夏まなとが躍動している。

主演タムドクと共に行動する四神・チュムチ役に挑む

宝塚歌劇が95周年を迎えた2009年元旦、宝塚大劇場では話題の大作、花組公演『太王四神記』―チュシンの星のもとに―の幕が上がった。四神の一人、チュムチを演じているのが、朝夏まなとさん。まっすぐのびた竹のようにさわやかな大型新人である。

「本公演でストーリーに絡む大きな役は初めてです」と、晴れ晴れした口調で話すが、2002年4月、『プラハの春』で初舞台を踏んで以来、新人公演主演を4回、宝塚バウホール公演でも主演した経験豊かな期待の若手男役だ。

「クラシックバレエをずっと習っていたので、宝塚以外のミュージカルは観ていましたが、全国ツアー『うたかたの恋』を観て感動し、ここだったら毎日舞台に立てる!と」
 同じ頃、やはり同じ佐賀県から宝塚音楽学校に入学した人がいることを新聞記事で知り、「遠い存在だった宝塚が急に身近に感じられるようになって」
 迷わず、受験を決意した。172センチの長身。意志の強そうな大きな瞳。バレエの基礎。朗らかな性格。スター性が躍動していた。

 宝塚音楽学校の卒業文化祭では、現・花組主演娘役の桜乃彩音らと共に、ピアノの連弾も披露した。「第88期生48人全員、夢をもって入ってきた人たちばかり。宝塚大劇場でのお披露目を目前に控えた発表会で、夢は最高潮に達しています。その時に初めて舞台化粧も教えてもらうんです」

 入団して4年目の2005年3月のことだった。朝夏まなとさんは大劇場公演『マラケシュ・紅の墓標』新人公演で、主役リュドヴィークが与えられた。

「研4の頃はまだ、舞台って楽しいな、くらいの気持ちしかありません。配役が発表され、なぜ私が主役なんだろうと、わけがわからず、ただ茫然となってしまって。でも上級生が、私がやりやすいような環境を作ってくださった。やると決まったからには、やるしかないなと。もう無我夢中、必死でしたね」

 2度目が2007年2月、『明智小五郎の事件簿―黒蜥蜴』新人公演の明智役。「1度目よりも緊張しました。それなりに責任を感じるようになったのだと思います」

 同年9月、『アデューマルセイユ』新人公演のジェラール役が3度目の主役である。静の心理描写が求められる大人の男性役が続いた。

「初舞台後、ずっと花組で春野寿美礼さんの背中を見て育ってきました。オサさんのさよなら公演の新公主演が決まったときは、すごくうれしかったです。今まで勉強してきたことを全部お見せしたいという気持ちで演じました。スーツの着こなしがよくなったと最後に言っていただいた言葉が宝物です」

 そして2008年5月、『愛と死のアラビア』新人公演のトマス役で4度目の主演を果たした。「真飛聖さん主演の新生花組披露公演でも勉強できる機会を与えていただき、幸せすぎですね。でも今回で新公を卒業します。7年間の最後なので、楽しんでやりたいですし、これからは本公演でしっかりと貢献できるようがんばります」

 主役は下級生に譲り、朝夏まなとさんは大長老プルキル役だ。

「08年3月に宝塚バウホール開場30周年ワークショップ『蒼いくちづけ』で主役・ドラキュラ伯爵をさせていただけることになったとき、信じられない気持ちと同時に、チャンスを与えていただいたので、なんとか期待に応えたいと思いました。尊敬している小池修一郎先生の作品。自分が主演で指導していただけるのは、とてもありがたいです。1幕のクラシカルな雰囲気を出せるよう勉強しなさいと言われ、ゆったりとした、余裕のある動きを学びました。1回きりの新公とちがって、バウでは公演期間中、毎日気持ちをキープし、成長していかなければいけません。貴重な経験ができたので、次のステップに生かしていきます」

 ところで、朝夏まなとさんがチュムチ役で出演中の宝塚大劇場は今年から座席が全面入れ替えられており、座席数や配列はそのままだが足元の空間が広くなっている。メインロビーの絨毯も新調して、100周年を迎える歩みがいよいよスタートした。伝統ある美しい歴史の1ページを飾る宝塚歌劇95周年幕開け公演。2月2日、千秋楽のあとは2月13日から3月22日まで東京宝塚劇場で上演される。

「新人公演を卒業すると多少、自分の時間に余裕ができると思いますので、感受性を磨いて舞台に生かせるように、たくさん、いろんな勉強をしたいと思っています」

 ナマの舞台の感動は、瓶詰めにしてとっておくことはできない。劇場に足を運び、一瞬を、一呼吸を共有してこそ、得られる喜びである。

朝夏 まなとさん

2002年『プラハの春』で初舞台、花組に配属。05年『マラケシュ・紅の墓標』で新人公演初主演。08年バウ・ホール公演『蒼いくちづけ』でバウ初主演。
佐賀県出身/愛称・まぁ、まなと

インタビュアー 名取千里(なとりちさと)
ティーオーエー、現代文化研究会事務局/宝NPOセンター理事主な編著書「タカラヅカ・フェニックス」(あさひ高速印刷)「タカラヅカ・ベルエポックI・II」(神戸新聞総合出版センター)/「仕事も結婚も」 (恒友出版)
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