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花組 愛音 羽麗

3月7日まで上演中の宝塚大劇場花組公演は、自由奔放に生きてきた男とやんちゃなお嬢様が紡ぎ出すミュージカル・ロマン『愛のプレリュード』と、大人っぽい香りのするレビュー『Le Paradis!!』—聖なる時間—の2本立て。 美形男役の愛音羽麗、花組の伝統を受けつぎ、真飛聖のサヨナラ公演を組一丸となり盛り上げる。

花組の美学を伝えていく男役

 1997年に初舞台を踏み、花組に配属されて以来、愛音羽麗さんにとって5人目のトップを送り出す公演『愛のプレリュード』『Le Paradis!!(ル パラディ)』が2月4日、宝塚大劇場で初日を迎えた。愛音羽麗さんは今年、入団15年目。ご自身が上級生になった分、これまでで1番身近なトップを送り出す舞台である。
 
 「退団されるトップの真飛聖さんは、どんなときでも明るくて元気。そのエネルギーが花組全体につたわり、すばらしいチームワークができています。これからもその良さを失わずに、みんなで膨らませていければいいですね。真飛さんのほかにも退団する人がたくさんいるので、一緒に舞台に出るのが最後という寂しさはありますが、お稽古に取り組む姿勢はこれまでと変わりません。一人ひとりが必死に役を深めて輝き、その輝きが一つになって真飛さん率いる花組の集大成となり、みんなで退団者の方を送り出す。そのために、まずは自分のやるべきことに集中することが大事なんです」

 ミュージカル・ロマン『愛のプレリュード』で愛音羽麗さんは、トップ真飛聖が演じるフレディの友人、スティーブ役だ。自由奔放に生きてきたフレディの、傷のある過去を深く理解している唯一の人物。久しぶりに港町サンタモニカに帰ってきた腕利きのボディガードのフレディを、スティーブは温かく迎え、仕事を紹介する。ある美しい令嬢のボディガードだ。座付き演出家・鈴木圭氏の宝塚大劇場デビュー作である。

 「さよなら公演ですから、どちらかというと、楽しいというよりもシリアスな物語です。最後にフレディがサンタモニカを去る場面があり、そこが卒業される真飛さんを送る気持ちと重なって胸がつまります」
 このサンタモニカで温かいものにたくさん出会えたけれど去っていくよ、とフレディ。観客の気持ちも最高潮に高まるラストだ。

 鈴木氏は「衣装は背広だがコスチューム物の大芝居だと思って演じてほしい。台詞のテンポも聞かせるところは誇張して」と指示を出した。花組では一昨年12月『相棒』、昨年7月『麗しのサブリナ』、11月『メランコリック・ジゴロ』など、スーツ物が続いた。同じスーツ物でも『愛のプレリュード』の時代設定は1930年代。現代芝居とはちがうのである。

 シンプルな背広を素敵に着こなすことができたら、一人前の男役。
 「これまで年月と時間をかけて、どうしたら理想の男役に見えるのか、ずっと考え続けてきました。それが困難であればあるだけ、男役を演じることに醍醐味があります」
 いつか男らしい武将役をやりたい。そう思うようになっていた愛音羽麗さんは昨年3月、『虞美人』で漢の名将・韓信役を演じて高い評価を得た。「男役冥利に尽きる役を経験できたことは、ありがたかったです。相手役の桃娘を演じた望海風斗も初めての娘役で壁にぶつかっていました。男役が女役をやることで見えてくるものは大きいと思いますし、一緒に創り上げていく作業は楽しかったですよ」

 レビュー『Le Paradis!!(ル パラディ)―聖なる時間(とき)―』のプロローグは板つきだ。男役を引き連れて踊る愛音羽麗さんは、中詰めのメドレーの中で「じらさないで」を歌う。
 演出家20周年の藤井大介氏のオリジナル。ちょっぴりほろ苦いパリの魅力で綴る、大人っぽいレビューなのだ。

 さて、サンタモニカに残った人たちには、それぞれの役割がある。街を守るのは要のつとめ。「ファン時代から花組が大好き。歴代トップの方が残して下さった美学をきちんと伝えていきたい」
 もちろん、愛音羽麗さんの色を加えて。

愛音 羽麗さん

1997年『仮面のロマネスク』で初舞台、花組に配属。2003年バウ・ワークショップ『おーい春風さん』でバウ初主演。同年『野風の笛』で新人公演初主演。07年バウ・ホール公演『舞姫−MAIHIME−』でバウ単独初主演。
大阪府出身/愛称・みわっち、みわ

インタビュアー 名取千里(なとりちさと)
ティーオーエー、現代文化研究会事務局/宝NPOセンター理事主な編著書「タカラヅカ・フェニックス」(あさひ高速印刷)「タカラヅカ・ベルエポックI・II」(神戸新聞総合出版センター)/「仕事も結婚も」 (恒友出版)
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