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月組 明日海 りお

4月11日まで上演中の宝塚大劇場月組公演は、フランスの作家ボーモン夫人によって書かれた寓話「美女と野獣」を原作とする『バラの国の王子』と、華やかで楽しく美しい宝塚ならではのショー『ONE』の2本立て。 爽やかで愛らしい魅力があふれ出る明日海りお、多彩な役を経験し、宝塚の理想の男役へと成長を続ける。

凛と輝く ONLY ONEの男役

 4月11日まで宝塚大劇場で月組により上演中のミュージカル『バラの国の王子』の原作は、フランスの作家ボーモン夫人が書いた寓話「美女と野獣」。「美女と野獣」はディズニーのアニメーション映画でもよく知られているが、『バラの国の王子』では魔法で野獣に姿を変えられた王子と心やさしい娘ベルとの気持ちの結びつきが丁寧に描かれ、人間味あふれる物語が展開する。台詞のほとんどが歌で綴られた、感動的なミュージカルだ。

 虎の姿に変えられた家臣を演じているのが、男役として来年、10年目を迎える明日海りおさん。
 「脚本・演出の木村先生がおっしゃるにはゴシックホラーのイメージだとか。ほかにも色々な動物に変えられた家臣たちがいて、みんな、衣装はシンプルでクラシカル。歌はすべて木村先生の作詞によるオリジナル曲で、美しい旋律なので歌っていてもすごく心地よいですね。先生いわく、月組はみんなの歌声が集まるとあったかい印象になるそうです。多人数でのアンサンブルは宝塚歌劇の強み。一人ひとりが場面の情景を鮮明にイメージすることで、怪しさ、危うさなどの表現にも深みが出ると思いますので、いつも以上に敏感になれるよう心がけています」
 数十人によるアンサンブルが響き渡る舞台は、圧巻である。

 これまでに新人公演の主演を4回、バウホール主演もすでに2回経験している明日海りおさんは、宝塚の麗しい正統派男役として欠けるところがない有望なスター。
 「男役10年と言われる研10まで、今年1年しかありません。この1年のうちに、私がファン時代に好きで観ていた宝塚の理想の男役さんに少しでも近づきたい。そのために、今何をしたらいいのか、理想の男役さんはどこが素敵なんだろう、自分がやりたいのはなんだろう、ということを、もう一度基本に戻ってじっくり考え直し、再構築したいと思っています。今頃、そんなことをやっていてはだめだといわれるかもしれませんが、次の舞台に生かしていくために、自分と向き合う時間を大切にして、よく考えることが必要だと感じています」

 いかにも宝塚らしいと言われる二枚目の役が最もむずかしいそうだ。
 「人間は一人ひとりちがうように、単に二枚目といっても、役の数だけ全く異なる人がいます。役の背景も考えて役作りをして、本当にその人が生きているみたいに演じられなければ」

 これまでで最も自分とかけ離れていると感じた役をお聞きすると、「『THE SCARLET PIMPERNEL』のショーヴランでしょうか。でもどの役も、自分とかけ離れた部分と、すごく理解できる部分の両方を持ち合わせていて、例えば歌詞の一部分などが糸口になって共感できる感情が流れ出したり。反対に、台本では痛いほど気持ちが分かったのに、演じてみたら、そう思えなかったり。新人公演を卒業してから、いろんなタイプの役を経験させていただき、そのたびに新しい発見がありました。いい意味で、お客様を裏切っていければ。明日海りおならこんな感じになるだろうというお客様の想像を超えていきたい」


 その熱い決意がショー『ONE』の中で、沸点を超えた水のように昇華する。出演者が場面ごとに様々な魅力を見せてくれるのがショーの醍醐味なのだ。作・演出の草野旦氏が描き出したのは、かけがえのない「ONLY ONEの宝塚」。そこにはONLY ONEの男役・明日海りおが凛と輝いている。 

明日海 りおさん

2003年『花の宝塚風土記』で初舞台、月組に配属。08年バウ・ワークショップ『ホフマン物語』でバウ初主演。同年『ME AND MY GIRL』で城咲あいと役替わりでジャッキー役を演じ、同公演の新人公演で初主演。09年バウ・ホール公演『二人の貴公子』で龍真咲とダブル主演。
静岡県出身/愛称・みりお

インタビュアー 名取千里(なとりちさと)
ティーオーエー、現代文化研究会事務局/宝NPOセンター理事主な編著書「タカラヅカ・フェニックス」(あさひ高速印刷)「タカラヅカ・ベルエポックI・II」(神戸新聞総合出版センター)/「仕事も結婚も」 (恒友出版)
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